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第1説:朝の風景 2004/10/05
序章 2004/10/05


第1説:朝の風景
 ……………………………………ガチャッ!…パーパパッパパーパ〜♪  

 『おぅはよぉうございまぁすっ!FMGラジオニュースのお時間です〜。
  なんと今日で晴天日が50日間連続と、ジオニドル国観測史上最長と
  なりました〜。前線の影響もあって、もうしばらく晴天が続くそうです。
  これを期に家族でラオール山にピクニックに行くのもいいですねぇ〜^^
  では、ニュースです〜♪…現在、ノルワール条約における“大木炭18”の
  密輸問題の件で、ノルワール王国とジオニドル民主主義共和国の政府間交渉が
  進展していない問題について、専門家の間では…………』



 ジオニドル民主主義共和国内の西、三日月型の海岸沿いに位置する、貿易港クレセトス町。
白を基調とした美しい町並みが訪れる人々の心に深く印象を残し、通称”白の蜃気楼の町”と
も呼ばれ、古くから観光スポットとして人気が高く、また各諸外国との貿易も盛んで、町は常
に活気に溢れていた。

 その町の中心部にある住宅街の一角に、ひときわ目立つとんがり帽子の屋根をかぶった、少
々古びた診療所が真新しい新築の家に囲まれたたずんでいた。


 …目覚ましのアラーム音変わりに設定されたラジオ番組が、軽快なBGMと共に診察部屋中
に響き渡っていた。半開きのカーテンの間からは、朝の会話を楽しむ小鳥たちの声と、放送さ
れていたとおり雲一つ無い見事な晴天が、朝の太陽の光をよりいっそうまぶしく部屋に降り注
いでいる。さらにテーブルにはパンとコーヒーと目玉焼きが、おいしそうに湯気を揺らめかせ
ている。
 ……あぁ!なんて理想的な朝!!こんな朝なら毎朝心地よく目覚められるに違いない!!!

 しかし、こんな爽やかな朝の診察部屋で、うつむきながら静かに泣いているエプロン姿の女
の子と、寝癖を直しながら、白衣姿で必死になだめている男がいた。

 「…せっかく……はみるが…クロにぃのために…ごはんつくったのに……」

 「だからあれは誤解ですよ〜…まさか私がハミルを睨むわけないじゃないですかぁ」

 「…でも……ぐすっ………うえぇ〜〜…」

 「あぁ〜〜よしよし、泣かないで下さい〜。私が悪かったですから」

 …どうやらこの二人には、ラジオの音も爽やかな小鳥たちの声もまるで聞こえていないようだ。


 男の名前はクロフ・ラルギードといい、町の人々からはクロ先生と呼ばれている。普段はこの診
療所で診察及び研究をしていて、どちらかというと博士に近い。部屋にいるときは常に白衣を着て
おり、外にいるときは黒い魔術師風の格好をして街をまわっている。すらりと延びた背丈とミドル
ショートの髪型で、遊び人のようにも見えるが、とても落ち着いていてのんびりとした性格らしく、
それは喋り方にもよく出ている。

 一方、女の子の名前はハミル・ウェバー。1年ほど前、クロフと一緒にこの街に越してきて、主
にクロフの助手をしている。背は肩がクロフの腰の位置ほどで、金色の美しい髪をしており、長さ
は背中まである。たいていはいつもクロフの後をついてまわっている。

 今日はたまたま、昨日いつもの散策帰りにクロフが”理想の朝のあり方”について熱く語ってい
たのをハミルが実践に移したものであった。クロフが寝ている間、朝早くに起きて一生懸命シチュ
エーションしたのだろう。
 それを、いくら悪夢でうなされてたからといって、思いっきり睨まれたのだから………ハミルは
絶望の海に身を投げ出される思いであった。
Date: 2004/10/05


序章
 男は暗闇を走っていた。
 はたして本当に道を走っているのか、と、自らに問う暇すら男にはなかった。早く、早くここから出なくては、というある種の強迫観念に駆られるよう、ひたすら走る。
 ふと、光が男の先に現れた。知らずに口の端が男の気持ちを表した。
…早く、早く…
安堵の思いが男の心を急かした瞬間、光が一気に男の姿を包み込んだ。男は視界を奪われた。



 うっ………
噎せ返るような硫黄の臭いが、まず鼻をついた。次に熱風の熱さが頬を焼き、思わず両腕顔を覆う。

 …ここは………またか…

安堵のため息は、一瞬で絶望のため息へと変わった。男にはわかっていた。次に何が起こるのか、を。
 ふと、何かが遠くから頭の中に響いてくる。何か……声のような。


『我は汝を見捨てるわけにはいかぬのだ・・。汝の災いは、また汝の御心の内にあり』


頭の中を言葉がはっきりとかすめていく。普通の者なら、混乱し怯えるところだろう。だが、男は違った。

 ………………うるさい……………

男はまるで何度も同じ説教を受けている気分であった。しかしそれはますます頭の中に響いてくる。男の顔は疲労からだんだん怒りに変わっていった。

 『に…ん………いち…ん…………く…に…ち………』
 
男の眉がいよいよ鋭角45°に達し、眉間に新たな渓谷が生まれようとしていたとき、
その声は新たなトーンに変わった。聞き覚えのある、子供のような高い声。子供のような……………子供?

 『…いちゃん………ク……に…ちゃん………………………クロにいちゃんってば〜っ!!!!』



 男は視界がぼやけているのに何の疑問も持たなかった。というより、持つことが出来なかった。目の前にいる……と思われる子供が、クロと呼ばれた男をそうさせた。
 「また汗たくさんで何か言ってたけど………だいじょうぶ?」
心配そうに子供……彼女は言うとおりの汗だくの顔を覗いた。
 「………ハミル………?」
クロは彼女の名前を確認した。しかし、彼は同時に「しまった…」、と思わずにはいられなくなる。ハミルと呼ばれた女の子が、頬と鼻を真っ赤に染めながら、しくしくと泣き出したからであった。
Date: 2004/10/05


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