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願い事

                                       取り戻すと誓った、たとえ、すべてを投げうっても・・・・・・
相互リンク
タイトル 作者 感想
>決☆闘☆王〜JUST DUEL〜 ひな様 ひな様の書いてらっしゃる小説です。ユニークなキャラやオリカが多く、また、鬼などの人外の存在なども多く登場するので楽しめる物語です。まだ始まったばかりなのでぜひ呼んでみてください。
>Nothing Venture.Nothing gain ファラオ様 ファラオ様の2作目です。王道ラブコメ要素とシリアスな場面の使いこなしがすばらしく、読んでいてどんどん引き込まれます。まだ始まったばかりなので読むなら今です。
>Cursed Doom 青眼様 青眼様の2作目の短編小説です。まだ始まったばかりなのですが今回はモンスターが実体化するようなので今後の展開にかなり期待できます。
>遊戯戦闘記〜時空物語〜 のばら様 文章の組み立てがすばらしく、カードの効果の表現方法もうまく、とても読みやすいです。また、決闘の展開や、その間に入る物語などもこっており、決闘とは別に、魔法などの設定もあるので決闘以外の部分も楽しめます。必見です。
>Again and Again GENMA様 GENMA様の2作目です。これもマガジンで人気連載中のエアギアをベースにした物語で、かつて無敗のリーダーだった主人公が、再び頂点を目指す様を描いた物語で個人的にかなりお気に入りです。
>Dream World カズト様 事故にあったことが原因で不思議な世界へと流れ着いてしまった主人公の七草 リュウカは、同じくこの世界に流れ着いていた兄を探すたびに出る。このサイトでかなりの人気を誇る小説です。現在100話を超えている大作です。ぜひ一度読んでみてください。
>精霊戦争 新装版 prism様 ここのサイトの小説の中で個人的に一番好きな小説です。精霊という特殊なカードが多数登場し、小説内での人間ドラマや王道のラブコメ要素も入っているのでお勧めの一品です。ここのサイトに来たからには一度は読むべきだと強く勧めます。
>魔法伝説〜Magical Legend〜 完全版 GENMA様 マガジンで人気連載中のネギまをベースとした小説で、ストーリー、決闘共にかなり充実しています。また、女キャラが他に類を見ないくらい多く、結構新鮮な感じがします。読んでみて損は絶対にありません。
>真世界を握るカード 青眼様 新たに改装された世界を握るカードです。以前と違い、始めから登場するキャラが多く、展開も違ったものになっています。そして何より最大の違いは主人公がふたりいることでしょう。まだ始まったばかりなので旧版を読んでなかった人も呼んでみることをお勧めします。
天津五柱神 yamato様 ゲームの世界に閉じ込められてしまった20人の生徒たち、彼らが生きて帰ることを目標に冒険していく様が面白おかしく描かれています。また、共鳴やライフ変動などに独自のルールが練りこまれており、かなり考えられていることが伺われます。見て損はありません。
遊戯王小説大賞2004

ACT86:旋律、再び 2004/07/10
ACT85:人形の望みは・・・・・・・ 2004/07/09
ACT84:人形 2004/07/08
ACT83:分散 2004/07/07
ACT82:門番 2004/07/06
ACT81:決戦前夜 2004/07/05


ACT86:旋律、再び
 ダイレクトが決まり、俺と人形のライフの差が大きく開いた。このまま一気に押し切る!

ヒールLP8600手札1枚
場 ヴァルキリーの騎馬兵(攻撃表示)、寡黙な天空剣士(攻撃表示)
伏せ なし

ヘヴンLP4200手札2枚
場 なし
伏せ なし

ヴァルキリーの騎馬兵 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1900 DEF1300
このカードは、自分の場か墓地に存在するカード名にヴァルキリー、またはヴァルキュリアとついているカード1枚につき、攻撃力が100ポイントアップする。

寡黙な天空剣士 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1800 DEF1600
このカードは魔法の効果を受けない。

ヴァルキリーの騎馬兵攻撃力2000

「さぁ、お前のターンだぜ、もっとも、さっき使った交わる色彩の効果でお前はドローができないがな」

交わる色彩:通常魔法
自分の場にカード名に色の種類がついた楽師モンスターが存在するときのみ発動可能、次の自分のドローフェイズをスキップする代わりにデッキから色の種類がついた楽師モンスターを1体、特殊召喚できる。

「く・・・・・・・・私のターンです、手札から天使の施しを発動し、カードを3枚ドローし2枚捨てます」
 苦痛に顔を歪めながらカードを操る人形、だがその表情が笑みに変わる。
「確かに、あなたは私の戦術を把握しているようですね。ですがこればかりはどうしょうもないでしょう。私は強欲な壷を発動させます」
「・・・・・・・・・・・」
 姿形、デッキどころかその強運までも同じか、つくづく、反吐が出る人形だ。
「手札より聖歌―チャント―を発動させます。このカードの効果は、分かっていますね?」
「カードを2枚ドローし、その後デッキの1番上のカードを墓地に送る」
「正解です」
 満足そうに笑う人形。どこからともなく聖歌が流れてきて、聖歌の祝福を受けた人形の手札が潤う。報酬として人形が差し出すものは、デッキの1番上のカード。

聖歌―チャント―:通常魔法
カードを2枚ドローする。その後、デッキの1番上のカードを1枚、墓地に送る。

「カードを2枚伏せ、ターンエンドです」
 モンスターを出さない?ならばリバースカードは反撃系の罠か、それとも召喚系の罠。ミリアのデッキにはどちらも入ってはいるが、あいつの召喚系の罠はモンスターがいては発動できないタイプだったはず、ということはあれは召喚系の罠か・・・・・・
「俺のターンだな、ドロー」
 引いたカードを手札に加えるが、たいした手は思いつかない。今の戦力で攻撃すべきか否か・・・・・・・
 虎穴に入らずんば虎児を得ず、いくか・・・・・・・
「2体のモンスターでダイレクトアタック!」
 命令を飛ばす。それと同時に戦乙女の騎馬兵と寡黙な天使の剣士が出撃する。
「やはり攻撃してきましたか、リバースカードオープン、招かれざる出演者を発動させます」
 翻るリバースは俺の予想通り、召喚系の罠。人形の場に闇の帳が下りる。
「招かれざる出演者は発動ターン、手札からモンスターを召喚条件を無視して特殊召喚できます。私はこのカードの効果で光印を奏でし奏者を特殊召喚します」
 舌打ち、まさかそんなカードが手札にいようとは、誤算だった。だが俺の誤算はそれだけではなかった。
「俺は攻撃を中止して・・・・・・」
「いいえ、それはできません。もう1枚のリバースカード、逃れ得ない運命が発動しています」
「―――――――ッ!」
 声には出さない、動揺は、奴をいいように調子つかせるだけだ。
「逃れ得ない運命はいかなる状況下でもそれがバトルフェイズ中ならば強制的に戦闘を行わせる罠カード。あなたはこのターン、逃げることができません」
 おもむろに告げる人形、その言葉通り、俺のモンスターたちは光印を奏でし奏者に猛進する。
 だがそれは自殺行為。奏者の奏でる曲が、2体の僕を内側から破壊していく。
「光印を奏でし奏者が戦闘で効果モンスターを破壊したとき、追加効果であなたの場に出ている魔法、罠カードを破壊することができるのですが、今回はあなたの場に魔法、罠カードが存在していないのでこの効果は発動できませんね」
「チッ、味な真似を・・・・・・俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ」

招かれざる出演者:通常罠
自分の場にモンスターが存在しないとき、相手が攻撃を宣言した瞬間に発動可能。1000ポイントのライフを支払う。自分の手札にあるモンスターを1体、召喚条件を無視して特殊召喚できる。

逃れ得ない運命:通常罠
相手のバトルフェイズ中に発動可能。このターン、相手はいかなる場合でも戦闘を行わなければならない。

光印を奏でし奏者 光属性 ☆6 魔法使い族:楽師
ATK2500 DEF2400
このカードは通常召喚できない。自分の墓地にある光属性と闇属性のモンスターを1体ずつゲームから除外して特殊召喚できる。
このカードが戦闘でモンスターを破壊したとき、そのモンスターが効果モンスターだった場合、相手の場に存在している魔法、罠カードを1枚破壊できる。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキか手札から影印を奏でし奏者を召喚条件を無視して特殊召喚できる。

ヒールLP8600→7400手札1枚
ヘヴンLP4200→3200手札2枚

 落ち着け、まだライフ差は開いている。慌てることではない。
「私のターンですね、ドローします。フフフ、引きましたよ」
「・・・・・・・・そうか」
 ようよう言葉を発する。仕方がない、なぜなら、今の俺には対抗手段がないからだ。
「手札から魔法カード、テラ・フォーミングを発動させます。このカードの効果で私は賛美歌の聖域を手札に加えます」
 ついに手札に舞い降りた必殺のフィールドカード、フィールドが一瞬にして神々しい野原に変わる。

賛美歌の聖域:フィールドカード
すべての楽師モンスターの攻撃力と守備力は300ポイントアップする。さらに楽師モンスターのコントローラーは自分の魔法、罠ゾーンにも楽師モンスターを表側表示で召喚することができる。(守備表示での召喚も表側守備表示となる)さらに自分の場に楽師モンスターが存在する場合、楽師モンスターを対象とする墓地からの特殊召喚の効力は2倍になる。

 この聖域は楽師たちの力を上昇させる。まずいな・・・・・・・

光印を奏でし奏者攻撃力2500→2800守備力2400→2700

来るか・・・・・?
「これで終わりにしましょう、手札から魔法カード、旋律のオーケストラを発動させます!」
 かざされるカード、そして、野原の真ん中に舞台が出現する。
「紅の楽師、漆黒の楽師、白銀の楽師、深緑の楽師、蒼天の楽師、黄色の楽師、サイレントコンダクター、双子の奏者、エンジェルコンダクター召喚!」
 舞台の幕が上がる、そこに存在する10人の楽師、それらが一様に、俺を見つめていた。

旋律のオーケストラ:通常魔法
このカードの発動ターン、自分はモンスターを召喚、特殊召喚することができない。
ライフを半分支払う。自分のデッキから楽師モンスターを自分のフィールドの空きがあるところすべてに特殊召喚することができる。
このカードの効果で特殊召喚されたモンスターはエンドフェイズにデッキに戻る。
その後、デッキをシャッフルする。

紅の楽師 炎属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK1700 DEF1200
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードが表側表示で場に出ている限り自分の場に出ている楽師モンスターはすべて攻撃力が300ポイントアップする。また自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードは魔法カードの対象にならない。
このカードが戦闘で破壊された場合、デッキ、墓地から同名カードを1枚手札に加えてもよい。

漆黒の楽師 闇属性 ☆5 魔法使い族:楽師
ATK2000 DEF1700
このカードは場に1枚しか存在できない。
このカードが表側表示で存在する限り、自分の場の楽師モンスターが戦闘で破壊したモンスターは墓地に行かずゲームから除外される。
自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在するとき、このカードは相手からの罠カードの効果を受けない。
このカードが戦闘によって破壊されたとき、デッキから同名カードを1枚手札に加えることができる。

白銀の楽師 光属性 ☆5 魔法使い族:楽師
ATK1900 DEF1600
このカードは場に1枚しか存在できない。
このカードが召喚、特殊召喚されたとき、自分はカードを1枚ドローする。このカードが表側表示で存在する限り、自分の場に楽師モンスターが特殊召喚されたとき、カードを1枚ドローできる。
自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在するとき、このカードは相手プレイヤーの魔法の効果を受けない。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから同名カードを1枚、手札に加えてもよい。

深緑の楽師 風属性 ☆5 魔法使い族:楽師
ATK1800 DEF1900
このカードは場に1枚しか存在できない。
このカードが場に表側表示で存在する限り、自分の場の楽師モンスターは戦闘でモンスターを破壊したとき、さらにもう1度攻撃することができる。
自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードは相手からのモンスターの効果を受けない。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから同名カードを手札に加えてもよい。

蒼天の楽師 水属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK1200 DEF2100
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードは召喚時に守備表示になり守備表示のまま攻撃できる。このカードが表側表示で存在する限り、自分の場の楽師モンスターはすべて守備表示のまま攻撃できる。また、自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードは罠カードの対象にならない。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキか墓地から同名カードを1枚手札に加えてもよい。

黄色の楽師 地属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK500 DEF1800
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードが表側表示で存在する限り、自分の場に出ている楽師モンスターはデュエル中、1度だけ戦闘ダメージを0にすることができる。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから同名カードを1枚手札に加えることができる。
また、自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードはモンスターの効果の対象にならない。

サイレントコンダクター 闇属性 魔法使い族:楽師
ATK1600 DEF1300
このカードが場に表側表示で存在する限り1ターンに1度、魔法、罠、モンスターの効果の発動を無効化できる。
また、このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから楽師カードを1枚、手札に加えることができる。ただし、コンダクター、指揮者と名がついたカードは選択できない。

双子の奏者 地属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK1400 DEF1300
このカードは2回攻撃ができる。このカードが戦闘によって破壊されたとき、このカードの攻撃力と守備力を半分にして特殊召喚することができる。この効果はデュエル中、1度しか使えない。

エンジェルコンダクター 光属性 ☆7 天使族:楽師
ATK2000 DEF2400
デュエル中に1度、エンドフェイズまで自分の場に出ている楽師モンスターすべてのもともとの攻撃力をこのカードに加えることができる。この効果を使用した場合、このカードは相手モンスターすべてに攻撃できる。また、自分の場に出ているこのカード以外の楽師モンスターは攻撃できない。
このカードが召喚、特殊召喚されたターン、自分の場に出ているすべての楽師モンスターは相手からの魔法、罠、モンスターの効果を受けない。

紅の楽師攻撃力1700→2300守備力1200→1500
漆黒の楽師攻撃力2000→2600守備力1700→2000
白銀の楽師攻撃力1900→2500守備力1600→1900
深緑の楽師攻撃力1800→2400守備力1900→2200
蒼天の楽師攻撃力1200→1800守備力2100→2400
黄色の楽師攻撃力500→1100守備力1800→2100
サイレントコンダクター攻撃力1600→2200守備力1300→1600
双子の奏者攻撃力1400→2000守備力1300→1600
エンジェルコンダクター攻撃力2000→2600守備力2400→2700

 さらに、人形は自らが召喚した白銀の楽師の効果で手札を潤していく。

ヒールLP7400手札1枚
ヘヴンLP3200→1600手札9枚

「さらに、私は手札より搾取のノクターンを発動します」
 さらに繰り出されるカード、響き渡る音楽、そして俺の手札、―といっても1枚だが―が吹き飛ばされ奴の手札へと舞い落ちる。

搾取のノクターン:通常魔法
自分の場に白銀の楽師、漆黒の楽師、深緑の楽師が存在するときに発動可能、相手の手札をすべて、自分の手札に加える。

「クリボーでしたか、まぁいいでしょう、これで終わりです。すべての楽師たちであなたにダイレクトアタックを仕掛けます」
 10人の楽師達が奏でる複合した音の矢が、俺に向かって放たれた。


今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/07/10


ACT85:人形の望みは・・・・・・・
 その人形には、記憶があった。
 自分ではない誰かの記憶、自分ではない誰かの言葉。
 それが自分ではなく、自分であると気づいたのは、目覚めてすぐだった。自分の中の少女の記憶は、その生涯を終えるまで、少女の中にある最も大切な存在に対して、憎悪や恨み言をはかなかった。
 人形には、それが許せなかった。この少年は、この少女を守ると約束したのに、その約束は果たされなかった。だが少年は、今も少女のことを想っている。そして少女も、自らの存在が消滅した後でも少年のことを想っていた。
 その記憶は人形にとっては不快だった。なぜなら、自分は誰からも愛されてはいないのに、自分と同じ姿をした少女を、記憶の中の少年は、こんなにも愛しているのだから・・・・・・・
 人形は、人間になりたかった。
 だがそのためには、この少女の記憶は邪魔だ。
 そのために、人形は少年を殺す。そうすることで、少女の記憶を消し去ることができると、教えられたから。




ヒールLP8000手札5枚
ヘヴンLP8000手札5枚

「俺の先行だ、ドロー」
 引いたカードを手札に加える。あの人形は自分のデッキはミリアと同じだといった。ならばこの決闘は俺の有利に働く。あいつのデッキと戦術ならば、とうの昔に知り尽くしている。
「ヴァルキリーの騎馬兵召喚!」
 1枚のカードを抜き放ち、モンスターを召喚する。召喚に応じて現われたのは、天かけるペガサスにまたがった1人のヴァルキリー。その凛とした瞳が、人形を見つめる。

ヴァルキリーの騎馬兵 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1900 DEF1300
このカードは、自分の場か墓地に存在するカード名にヴァルキリー、またはヴァルキュリアとついているカード1枚につき、攻撃力が100ポイントアップする。

ヴァルキリーの騎馬兵は、場に出ている同胞の数だけその攻撃力を上げる。自らもヴァルキリーなので、実質的な攻撃力は2000だ。

ヴァルキリーの騎馬兵攻撃力1900→2000

「さらにカードを2枚セットし、ターンエンドだ」
 追加される2枚のリバースカード、1枚は魔法、1枚は罠だ。どうでる?
「私のターンですね。ドローします」
 静かにカードをドローし、考え込む人形。そのしぐさがミリアを思い出させて不快さが増す。
「私はカードを1枚伏せ、さらに蒼天の楽師を守備表示にしておきます。ターンエンドです」
 現われたのは、手に白銀のフルートを携え、蒼い衣装に身を包んだ楽師、彼女の奏でる音色が、清涼の響きを持ってこちらに届いてくる。

蒼天の楽師 水属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK1200 DEF2100
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードは召喚時に守備表示になり守備表示のまま攻撃できる。このカードが表側表示で存在する限り、自分の場の楽師モンスターはすべて守備表示のまま攻撃できる。また、自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードは罠カードの対象にならない。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキか墓地から同名カードを手札に加えてもよい。

「俺のターンだな、ドロー」
 カードを引く、蒼天の楽師の守備力は2100、今の俺の手ごまでは、その壁を突破することはできない。今はな・・・・・・
「俺はモンスターをセットして、ターンエンドだ」
 新たに追加される正体不明のモンスター、さて、うまくいくかな?
「私のターンですね、ドローします。少し飛ばしますか、私は手札から交わる色彩を発動させます」
 交わる色彩、ということは、来るのか?

「私はこのカードの効果でデッキから紅の楽師を特殊召喚します。そして紅の楽師の効果を発動させます」
 紅の楽師が奏でる音響が、人形の場の楽師たちの闘争本能を刺激する。

紅の楽師 炎属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK1700 DEF1200
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードが表側表示で場に出ている限り自分の場に出ている楽師モンスターはすべて攻撃力が300ポイントアップする。また自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードは魔法カードの対象にならない。
このカードが戦闘で破壊された場合、デッキ、墓地から同名カードを1枚手札に加えてもよい。

紅の楽師攻撃力1700→2000
蒼天の楽師攻撃力1200→1500

 紅と蒼天、ということは後1体は黄色だな。
「さらに私は黄色の楽師を特殊召喚します」
 予想通り、だな。人形の場に、黄色の衣装に身を包み、手には竪琴、前の2人の楽師同様、髪も瞳の色も、衣装と名前と同じ黄色。そして次に奴が繰り出すカードは・・・・・・・
「手札から魔法カード、破滅のロンドを発動します」
 やはりな、紅、蒼天、黄色の楽師達が奏でる曲彩が、破滅を呼ぶ衝撃波となって俺のモンスターたちを襲う。
 演奏が終了したときには、俺のモンスターたちは全滅していた。

黄色の楽師 地属性 ☆4 魔法使い族:楽師
ATK500 DEF1800
このカードは場に1枚しか存在できない。このカードが表側表示で存在する限り、自分の場に出ている楽師モンスターはデュエル中、1度だけ戦闘ダメージを0にすることができる。
このカードが戦闘で破壊されたとき、デッキから同名カードを1枚手札に加えることができる。
また、自分の場にこのカード以外の楽師モンスターが存在する場合、このカードはモンスターの効果の対象にならない。

破滅のロンド:通常魔法
自分の場に、「紅の楽師」、「蒼天の楽師」、「黄色の楽師」が
存在しているときに発動可能。相手の場に出ているすべてのモンスターを破壊する。

黄色の楽師攻撃力500→800

俺のモンスターたちが破壊される。だが俺はほくそ笑んでいた。読み通りだ・・・・・・・
「行きます、私の場に出ているすべての楽師たちで攻撃!行きなさい!楽師たち!」
 主の命令に従い、人形の僕たちが俺に向かってくる。だが、甘い!
「リバースカードオープン!聖なるバリア―ミラーフォース―!」
「な!?」
 翻るリバース、楽師達が奏でた衝撃波は、そのまま彼女たちへと跳ね返っていった。
 響き渡る破壊音。音が収まったとき、人形の場の楽師たちは蒼天の楽師を残し全滅していた。
「舐めるなよ人形、何回あいつとやったと思っている。あいつのデッキ、戦術も、俺には解っているんだよ」
「・・・・・・・・・ターンエンドです」
 異変はここで起こった。奴のエンドフェイズ、俺の場を光が満たしたのだ。
「これは・・・・・?」
「言い忘れていたが、お前が破滅のロンドで破壊したモンスターの中に、こいつがいたのさ」
 そう言って墓地の1番上にあるカードを取り出す。そこには魂の管理者ザフィケルと書かれていた。
「それは・・・・・?」
「ザフィケルがカードの効果で破壊されたとき、エンドフェイズにこいつを除外することで墓地のモンスターを1体、蘇生させることができる。今、ザフィケル以外で俺の墓地に存在しているモンスターは1体のみ、蘇れ!ヴァルキリーの騎馬兵!」
 満たされた光が薄れる。現われたのは、純白の騎馬兵。

ヴァルキリーの騎馬兵攻撃力1900→2000

魂の管理者ザフィケル 光属性 ☆3 天使族:効果
ATK500 DEF1900
このカードがカードの効果によって破壊されたターンのエンドフェイズに、このカードをゲームから除外することで自分の墓地に存在するモンスターを1体、特殊召喚してもよい。

「俺のターンだな、ドロー!」
 勢いよくカードをドローする。確認後、すぐさま行動に移す。
「寡黙な天空剣士召喚!」
 俺の場に、寡黙な天使の剣士が現れる。その目が見つめるものはやはり人形。
 寡黙な天空剣士はその寡黙さからか、魔法耐性が強い。並の魔法ではびくともしない。

寡黙な天空剣士 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1800 DEF1600
このカードは魔法の効果を受けない。

「ブラックコアを使用して楽師を除外、そして2体のモンスターでダイレクトアタック!」
 疾走する2人の天使、その剣が人形を切り裂く刹那、奴のリバースが発動した。
「リバースカードオープン!深き森の子守唄!」
 予想通りだ。奴の発動に合わせて俺のリバースも発動する。
「チェーン!リバースカードオープン!エンジェルダーツ!」
「!?」
 翻るリバース、それと同時に、翻りかけていた奴の深き森の子守唄がどこからともなく飛来した天使の翼の1枚によって再び縫い付けられた。
「こ、これは・・・・・・!?」
「エンジェルダーツは、相手がリバースを発動しようとしたときに発動するカウンター型の速攻魔法だ。こいつでお前の深き森の子守唄を無効化させてもらった」
 無効化された子守唄。そして、疾風と化した2人の僕の剣が、人形を切り裂いた。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁ!」
「ターンエンドだ」

エンジェルダーツ:速攻魔法
相手がセットしたカードを表にしたときに発動可能、そのカードを裏側のまま墓地に送る。その後、自分は600ポイントのライフを得る。

ヒールLP8000→8600手札1枚
ヘヴンLP8000→4200手札2枚

「覚悟はいいか人形?一応言っておくが、抵抗はあまりお勧めしない。楽に死ねなくなるぞ」
 うずくまる人形に向かって、俺は告げた。


あとがき
リディア「なんか圧倒的だね」
ツキ「そうですね〜」
ヒール「当然だろ?あいつのデッキの特性、戦術、構成は知り尽くしてんだ。手に取るようにわかるぜ」
リディア「そんなもんなの?」
ツキ「そうなんじゃないんですか?」
ヒール「さっさと決着をつけたいところだな」
ツキ「フッフッフ」
リディア「あ、なんか嫌な笑い・・・・・・・」
ツキ「こんなに早く決着がついたらつまらないじゃないですか。もっと長引かせますよ」
ヒール「悪趣味だな」
ツキ「なんとでもいいなさいな。ハッハッハ〜」
リディア「作者さんが壊れてしまったので、今回はここまでです。さようなら〜」
Date: 2004/07/09


ACT84:人形
 今でも、夢に見る。
 あの暗い祭壇で、俺の大切な人は消えた。
 耳にこびりついて離れない、あいつの最後の声、あいつの魂が砕ける音。
 だから、これは嘘だ。あいつが、今、俺の目の前にいるなんてことが、あるはずがない。
「会いたかったよ、ヒール」
「あ・・・・・・・・」
 違う・・・・・・・・
「また会えるなんて、夢みたいだね」
 そう、これは夢・・・・・・・・・無様な愚者が見る、一時の夢幻・・・・・・
その笑顔も、そのしぐさも、その声も、すべては偽者、虚構の中の代物・・・・・・・・・
「どうしたのヒール?さっきから黙り込んで」
 ミリアが、いや、ミリアの姿をした何かが、そう言って微笑んだ。
 やめろ・・・・・・・
「・・・・・・違う」
「え?」
 それ以上・・・・・・・・・
「お前は、違う。ミリアじゃ、ない!」
 あいつを、貶めるな・・・・・・・
 瞬間、俺は銃を引き抜き、照準をミリアの形をした何かに合わせた。
「な、何をするのヒール!私だよ!ミリアだよ!」
「くだらねぇ芝居はやめろ、お前がミリアのはずがない。あいつはもう、いないんだ。それこそ、空の上にも、地の底にもな」
「・・・・・・・・やはり、この程度の演技ではあなたを騙すことはできませんか」
 それは、口調をがらりと変えてきた。決定的だった。こいつは、敵だ・・・・・・・・・・
「誰だ?お前は」
 何を聞いている、そのまま引き金を引け、躊躇うな、敵は殺せ、俺の道をふさぐものはすべて殺せ。
 だというのに、俺の口は勝手に言葉をつむいでいた。
「自己紹介をさせていただきます。初めまして、私の名は、ヘヴンと申します」
 優雅に一礼するヘヴン、銃を向けられているというのに、その表情に怯えはない。
「あなたの恋人、ミリアの残留思念を基にして造られた。ホムンクルスです」
「ホムン、クルスだと・・・・・・・・?」
 聞いたことがある、器に魂をこめることで造ることができる人造人間。魂は、その人間の記憶や残留思念でもいいという。
「ヒール=ナイツさん、あなたを、殺します」
「なに?」
「私はあなたが憎い、あなたは私を守ると約束してくれました。でも守ってはくれなかった。私は、あなたを恨んでいます」
 そう言ってデッキを構えるヘヴン。俺は黙って銃をおろした。
 そして感じる、心が凍っていくのを、感情が、心の奥底に引っ込んでいって、代わりに殺意が心を満たすのが。
「なるほど、つまりお前は、俺の敵ということだな?なら、容赦はしない」
 デッキを構える、こいつはミリアじゃない、ミリアの姿をしただけのただの人形だ。躊躇いはない、後悔はない。
「あなたに私が殺せますか?恋人と同じ姿の私を?」
 スイッチが切り替わるなんてもんじゃない、銃の撃鉄が落ちるような音がして、俺の心は切り替わった。こいつの存在が、俺にとっては不快だ。
「殺せるか?だと?愚問だな、俺は貴様を殺す。一片の躊躇もなく、微塵の後悔もなく貴様を殺す。人形風情が、生意気にも人間様にたてつくな」
「無理です、あなたに私は殺せません。あなたがミリアを愛している限り、あなたは私を殺せません。私には彼女の記憶があります。私はヘヴンであり、ミリアでもあるのです。その私があなたを憎いと言っているのです。だから、ミリアを思うのなら、ここで私に殺されてください」
「クッ」
 思わず笑みがこぼれる、人形風情が、随分と物を言う。
「何がおかしいのですか?」
「貴様がおかしいに決まっている。ミリアが俺を恨んでいる?なるほど、確かに俺はあいつを守れなかった。恨まれても仕方がないだろう」
「だったら・・・・・・・」
「だがそれがどうした?」
 何かを言い出した人形の言葉を制し、俺は続けた。
「恨んでいるのならば、俺は頭を下げて謝罪しよう。そして償おう、ミリアを取り戻して、そして今度こそ、あいつを守りきりことにな。もっとも、本当にあいつが俺を恨んでいるのか、疑問だがな」
「どういうことですか?私はあなたを」
「ミリア自身が、そう言ったのか?」
「ッ!」
 動揺する人形。
「貴様が俺の士気を下げるために、口からでまかせを言ったのかもしれないからな。さて、今の動揺を見ると、その可能性も無きにしも非ずのようだな」
「そんな、ことは・・・・・・」
「無いと言えるのか?」
「・・・・・・・・・・・・ですが、どの道あなたでは私は殺せません。私は、当時のミリアのデッキを完璧に再現しています。そして彼女の記憶からその戦術も備えています。あなたでは、私には勝てません」
「そうか・・・・・・・」
「ですから、あなたはここで死にます。私に、殺されます」
 ミリアのデッキと戦術を持っていることが、奴を後押ししたのか、人形はさらに語ろうとした。
「もういい」
 もううんざりだ、まだ喋り続けようとした人形を制して、俺は言った。
「人形風情が、あいつの顔で、あいつの声で、これ以上囀るな。反吐が出る。それにな、貴様はひとつ、勘違いをしている。俺はお前を殺すんじゃない。壊すんだよ。間違えるなよ、人形」
 言葉を刃のように、俺は奴に叩きつけた。
「はじめるぞ、先に言っておくが、慈悲があると思うなよ!」
『決闘!』
 殺意にまみれた氷の心が、動き出す・・・・・・・・


あとがき
ツキ「・・・・・・・・・・・」
ジン「・・・・・・・・・・・」
ジン「だれ、これ・・・・・・?」
ツキ「えと・・・・・・ヒール・・・・・・・・」
ジン「いくらなんでもやりすぎ」
ツキ「・・・・・・・・やっぱり?」
Date: 2004/07/08


ACT83:分散
 暗い暗い闇の中、そこにひとりの魔人とひとりの罪がたたずんでいた。
「レイラが、やられたな」
 呟く魔人はもちろんルシファーだ。
「そうですね」
 答える罪も、やはりロア。ロアはただ肩をすくめるだけだった。
「ま、仕方がないでしょう。所詮彼女は僕が急造で造り上げた未完生体です。ですが、彼女が足止めをしてくれたおかげであれが完成しました。あとは、魂の注入だけです」
「そうか」
 かつて、そこまで邪な笑いがあっただろうか。世界中の悪意を集めてもまだ足りない。
「そればかりは、我がしなければなるまいな。行くぞ、ロアよ」
「御意に」
 歩き出す、人ならざるもの達、その目的は、計り知れない。


「さて、どうするヒール?」
 デッキを回収しながらケルヴィンが聞いてくる。聞かれるまでもない。
「行こう、この先に、奴らがいる」
 今でも思い出す。あの、深淵の闇の祭壇を。あのおぞましい光景を・・・・・・・
「ヒール、あんまり気負うなよ」
 肩を叩かれる、そしてはじめて気づいた。俺が握り締めた手が、血で赤く染まっていた。どうやら知らず知らずのうちに爪が皮膚を食い破っていたらしい。
「ああ、解っている。行こう」
 歩き出す。ここで決着をつける。俺は、すべてを取り戻す。



 闇すらも恐れる闇、その深淵の祭壇には何もいない。
 罪達も、ルシファーすらも、ここにはいなかった。
「こいつは・・・・・どういうことだ?」
「解りません、おそらく何かの罠でしょう。皆さん、気をつけてください」
 クロノの警告はあまり意味がなかった。
 なぜなら突然地面が波打ち始めたからだ。
「おいおい、地面からかよ!」
「きゃぁ!」
「クッ、まずいですよこれは!ここで僕達を分散させるつもりです!」
「おのれぇ、小賢しい真似を!」
「チッ、皆!何とか合流することを考えろ!奴らは各個撃破を狙ってくる!死ぬなよ!」
 俺の声が皆に聞こえたかどうかは解らない。皆の答えを聞く前に、俺の体は地面に飲み込まれたからだ。



「さて、これで彼らの分散には成功しました。どうします?ルシファー様」
「ヒールの元にあれを、残りの奴らは、お前のホムンクルスを当てろ。どちらに軍配が傾くとしても、その死が、我が糧となることに変わりはない」
「かしこまりました。あれはもう活動可能です。あれほど完成度の高いものも、そうできるものではありません。あれならば、ルシファー様も満足なされることでしょう」
「そうか、ヒールよ、我を失望させるなよ」
 ルシファーの笑い声が、深淵に闇に響いていた。



「さて、どうするか」
 床から落とされてきてみれば、そこは四角形の形をした広い部屋。出口らしきものが見当たらないここで、さてどうしたものかと思案中だ。
「上は、もう天井ができてるか。となると、隠し扉の類があるよな」
 そのとき、壁の一部が割れ、中から人影が出てきた。敵か?
「待ってたよ、ヒール」
「な!?」
 中に入ってきたやつ、そいつの姿を見て、俺の思考は停止した。
「う、嘘だ・・・・・・・・・」
 そう、嘘だ。こんなことがあるわけがない。こんな、こんなところに・・・・・・・・
「ミ、リア・・・・・・・・?」
 あいつが、いるはずがねぇ・・・・・・・・



あとがき
今回、すごく短いですね。まぁつなぎだからしょうがないんですけど・・・・・・
Date: 2004/07/07


ACT82:門番
 目が覚める。気分は良好、体調も良好、コンディションは万全。よし、いい感じだ。
 今日、俺たちはルシファーに挑む。もちろん、簡単は事じゃない。奴の部下の罪達もいるし、それ以外の奴がいたとしてもおかしくはないからな。
(ヒールよ、いよいよ、決戦だな)
 ウルドの声、そうだな、決戦前に言っておくか。
「ああ、今日で俺の決着をつける、そのあと、いよいよお前との約束を果たすときだな。まかせろ、俺は負けないし、時食いも倒すさ」
(・・・・・・そうか)
 それを聞いて安心したのか、それっきりウルドが話しかけてくることはなかった。
「ヒール?準備はいいか?そろそろ行くぜ」
 呼びかけてくるジンの声、いよいよだ・・・・・・・
「ああ、今行くぜ」
 ミリア、待っていろ、必ずお前を、取り戻す。



 バール遺跡、3ヶ月前と同じく、禍々しい瘴気をかもし出している遺跡。
 そこに俺たちは立っていた。
「ヒール、本当にここに奴らがいるのか?」
「ああ、間違いない。3ヶ月前、奴らはここの門から、現われたんだからな」
 確かな裏づけがあるわけじゃない。だがなぜか、奇妙な確信はあった。
 ここに、奴らはいると・・・・・・・
 3ヶ月前、俺はここですべてを失った。ならばすべてを取り戻すのも、ここだということなのだろうか?
「まぁいいじゃねぇかケルヴィン、他に手がかりもないんだ。行こうぜ」
「その通りですよ。それに、この瘴気、これは完全に普通ではありませんよ」
「行こう、ヒール、ミリアさんを助けてあげようよ」
「ああ、行くぜ!」
 皆の言葉に後押しされて、俺たちは遺跡へと突入した。



「ん?」
 バール遺跡の広場、あの門がある場所、その門の前に、人影があった。
 それは小さな少女のようだった。白い髪、紅い瞳、白い肌。冬というものが人型になったら、それはこんな姿になるのだろうかと、ふと思った。
「ようこそおいでくださいました。私の名前は、レイラ、ロア様より、あなた方の御持て成しを仰せつかった者ですわ」
 そう言って、スカートの裾をつかみ丁寧に軽く一礼とする少女、レイラ、案の定、こいつらは一筋縄ではいかなそうだな。
「御持て成しか、ようは足止めだろう」
 ケルヴィンが一歩、前に進む。
「まさか貴様一人で、俺たち全員を相手にできるわけがないからな」
「あら、解ってらしたのですか。それならば、遠慮は要りませんね」
 優雅な笑みと共にデッキを取り出すレイラ。
「こんなところで時間はかけられん。俺がさっさと決めてやる」
 同じくデッキを取り出すケルヴィン、それが闘争の合図、始まりの言葉をもって、誰にも止められない戦いが始まる。
『決闘!』
 二人の声が、木霊する。

ケルヴィンLP8000手札5枚
レイラLP8000手札5枚

「俺の先行だ!ドロー!リバースカードを1枚セットし、さらにモンスターをセット!ターンエンドだ」
「なら、私のターンですね。ドロー」
 鋭くカードを引くケルヴィンとは対照的に、優雅にカードをドローするレイラ、一体彼女の戦術はどのようなものなのだろうか。
「手札から魔法カード、苦渋の選択を発動させます。私が選ぶのはこの5枚ですわ」

●死者蘇生
●魔法石発掘
●キラースネーク
●黒き森のウィッチ
●マシュマロン

 繰り出したのは、デッキ圧縮の魔法カード、このカードは状況しだいではかなり戦略の幅が広いカードだ。
 だが選んだ5枚に共通点はない。しかも死者蘇生を墓地に送る?一体何を考えているんだ。
「・・・・・・俺はキラースネークを選択する」
 ややためらいながらカードを選択するケルヴィン、おそらくあいつは、相手の意図を読み取ろうとしているのだろう。
「解りました。残りのカードを墓地に捨てます」
 墓地に吸い込まれていく4枚のカード。代償として手にはいったのは帰還能力があるといっても剣にも盾にもならない無力な1匹の蛇。
「カードを1枚セットして、強欲な豪傑を召喚します」
 光と共に現われたのは、2メートルに迫るかという巨漢、その手には戦斧が握られている。いかにも力が強そうだ。その瞳には強欲そうな輝きが見える。
「強欲な豪傑は、攻撃するたびにデッキのカードを2枚、墓地に送らねばなりません。よって私はデッキから2枚のカードを捨て、攻撃します!」
 2枚のカードという前払いの報酬を受け、強欲な巨漢がケルヴィンの守備モンスターへと襲い掛かる。ものすごい勢いだ。その戦斧はケルヴィンの守備モンスターを容易く切り伏せるだろう。
 おそらく、その場にいるすべてのものがそう思っただろう。ただひとり、今まさに攻撃を受けようとしていたケルヴィンを除いては・・・・・・
 ガキィィィン・・・・・・
 何か硬いものがはじかれる音、見れば巨漢はその一撃をケルヴィンの出したドラゴンの鱗にはじかれてしまったようだ。
「残念だったな、守備モンスターの正体はこいつだ」
 不敵な笑みと共にケルヴィンが守備モンスターの正体をあらわにする。
 そのモンスターの鱗は透き通るような青、そこには一点の曇りもなく、清らかな光を放っていた。
「アクアマリンドラゴン、こいつの鱗はその程度の攻撃では傷ひとつつかん」
「・・・・・そのようですね、ターンエンドです」

強欲な豪傑 地属性 ☆4 戦士族:効果
ATK2300 DEF1400
このカードは攻撃するたびにデッキの上から2枚のカードを、墓地に送る。

アクアマリンドラゴン 水属性 ☆4 ドラゴン族
ATK800 DEF2300
海中深くに身を潜める巨大な海龍、その鱗を傷つけることは容易ではない。

「フン、そのままターンを終わらせてやるつもりはない!リバースカードオープン!サイクロン!」
 さらに追い討ちをかけるかケルヴィン、翻ったリバースから放たれる旋風の刃がレイラのリバースカード、ホーリーライフバリアーを切り裂く。
「あ・・・・・」
 呟き、だがもう遅い。ケルヴィンは言葉通り、さっさとこの決闘を終わらせるつもりだ。
「俺のターンだ!ドロー!一気に決める!魔法カード、サクリファイスマジック!」
 サクリファイスマジック、なるほど、うまい手だな。バトルフェイズ中ならば1000ポイントのライフを消費するが、今はメインフェイズ1、ならば1000ポイントのライフコストも存在しない。
 さらに・・・・・・・・
「俺はこのカードでアクアマリンドラゴンを生贄にささげ、カイザー・シーホースを特殊召喚!」
「え?」
 そう、サクリファイスマジックはレベル4以下のモンスターでも特殊召喚できるのだ。そしてこの場面であのカードが出たということは・・・・・
「来るな、ケルヴィンの切り札が」
「カイザー・シーホースを生贄に捧げ、いでよ!ブルーアイズ・ホワイトドラゴン!」
「そんな・・・・・・」
 光と共に現われた白銀の体を持つ至高龍、その誇り高き青い瞳が、レイラを見下ろしている。
「ブルーアイズよ!強欲な豪傑に攻撃!滅びのバーストストリーム!」
 放たれる光弾、それが巨漢の体を跡形もなく吹き飛ばす。
「くぅ・・・・・」
 苦痛に顔をしかめるレイラ、これで勝負は圧倒的にケルヴィンが有利になったな。
「最後に、リバースカードを1枚セットして、ターンエンドだ」

ケルヴィンLP8000手札1枚
レイラLP8000→7300手札4枚

サクリファイスマジック:速攻魔法
バトルフェイズ中にこのカードを発動させる場合、1000ライフポイントを支払う。自分のフィールド上モンスター1体を生贄にし、手札からレベル6以下のモンスター1体を特殊召喚できる。

「私のターンですね。ドローします」
 だがレイラの顔に焦りはなかった。相手の場には単体最強とまで言われている白龍がいるにもかかわらずだ。
「引きました。ケルヴィンさん。このターンで、あなたは終わりです」
「なんだと?」
 突然の勝利宣言。普通なら戸惑うところだろう。だがケルヴィンはただ不適に笑うだけだった。
「フン、面白い、やってみろ」
「言われなくとも」
 不適に笑う両者、そして、そこからレイラの戦術が始まる。
「まず、魔法カードの手札抹殺を発動させます」
 手札総入れ替えの魔法カード、そしてお互いにカードを引く、ケルヴィンは1枚、レイラは4枚だ。
「強欲な壷を発動。さらに追加で天使の施しを発動させます」
 立て続けに発動されるドローカード。見る見るうちにレイラの墓地がたまっていく。なるほど、そういうデッキか。
「そして、愚者の祭典を発動します。このカードは、お互いのデッキの上から5枚のカードを墓地に送る魔法カードです。さぁ、互いにカードを捨てましょう」
「ふん、自らのカードまでも捨て札とするか、たしかに、愚者の祭典だな」

愚者の祭典:通常魔法
自分と相手のデッキの上から5枚のカードを墓地に送る。

「そして魂の開放を発動。あなたの墓地のカードを5枚、除外します」
 ケルヴィンの墓地から光が上り、力を失っていく5枚のカード。これでケルヴィンの墓地に存在するカードは4枚。
「これで終わりです。最初の手札抹殺で手札には処刑人マキュラのカードがありました。よって手札から罠カード、現世と冥界の逆転を発動させます」
 そして繰り出された罠カード、現世と冥界が入れ替わり、墓地とデッキが入れ替わる。都合、ケルヴィンのデッキは残り4枚となった。
「これで終わりです。これでもう勝負はつきました。あなたの残りのデッキはもう把握済みです。逆転の可能性は、限りなく0に近いでしょう。私はカードを1枚セットして、ターンエンドです」
 勝ち誇るレイラ、だがレイラはひとつ、大きな間違いを犯した。
 それは、神官団NO2、ケルヴィン=フィニーの力量を侮ったことだ。
「俺のターンだな、ドロー」
「もうやめたらいかがですか?もう勝負はついたでしょう」
「勝負?ああ、確かに勝負はついたな。実につまらない決闘だった。時間もないことだしな、もう終わりにするか」
 そして翻るリバース、物まね幻想師の奥義
「な!?」

ものマネ幻想師の奥義:速攻魔法
1000ポイントのライフを支払って発動する。相手の墓地にある魔法、罠カードを1枚選択する。このカードは選択したカードとして扱う事ができる。

「はじめの苦渋の選択で死者蘇生を選択したのは失敗だったな」
 語り始めるケルヴィン
「そこにそんな必須カードがあったのだ。すぐにわかったぞ、貴様のデッキが現世と冥界の逆転を軸とした1ターンキルデッキだとな」
 そう、この読みの深さが、ケルヴィン最大の武器。身近で見てみて改めて思い知る。あの時、よく俺は勝てたなと。
「さて、状況は一変したな。貴様は後数ターン守りきれば勝ちだったはずが、これでは計算が狂ったか?まぁいい、貴様のデッキはすでに死に体だ。終わりにするぞ」
 そして繰り出すカードは死者蘇生。まったく、奴は最初から最後までゲームの流れを読んでいたようだな。
「ブルーアイズ2体で攻撃!滅びのバーストストリーム!」
 2体の至高龍から放たれる光の奔流。
「くっ、リバースカードオープン!和睦の使者!」
 必死になって防ぐレイラ、だがもう奴に勝機はない。
「ほう、まだ足掻くか。ターンエンドだ」
「わ、私のターンです。ドロー」
 弱弱しくカードをドローするレイラ、だがもう彼女のデッキは死んでいる。
 3ターン後、勝敗は決した。


今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/07/06


ACT81:決戦前夜
・・・・・・・・・・・・・夢を見る。

・・・・・・・・・・・・・私に大好きな人がいて、その人も私のことが大好きで。

・・・・・・・・・・・・・いつも一緒にいて

・・・・・・・・・・・・・結婚して子供を生んで幸せに暮らす。

・・・・・・・・・・・・・そんな、悲しい夢を・・・・・・・・・・



「ん、夢か・・・・・・・」
 本来その場所を最も好むであろう闇ですら身を引くほどの深淵の空間、ひと時の眠りから目覚めた魔人ルシファーは、誰にともなく呟いた。
「我の受肉の祭に生贄となった、あの娘の残留思念か。小賢しい、魂すらも消滅しながら、なお自らの存在を主張するか」
 忌々しげに顔を歪ませるルシファー、すると、その顔が急に笑みに変わる。
「ふむ、ひとつ面白い余興を思いついた。ロア、いるか?」
「はいルシファー様、ここに」
 呼びかけに答え現われたのは強欲(グリード)ことロア。
「何の御用でございましょうか?」
 首をたれ、ひざまずくロア、この男が敬意を払うのは、おそらくルシファーだけだろう。もっとも、そのことは他の罪達と同じだろうが。
「うむ、面白い余興を思いついた。今から、我の言う通りの人造人間(ホムンクルス)を造れ」
 ホムンクルス、人体の構造、構成、外見、どれをとっても人間と変わらない生命体、ただし、人工的に作られたものだということを除けば。
 ホムンクルスに必要な材料は大きく分けて2つ、人体の構成物質と魂のかけら、魂のかけらはこの場合、記憶や残留思念でもかまわない。
「はっ、仰せのままに」
 ロアが恭しく首をたれる。





 はっきり言って、俺はうんざりしていた。
 理由は、まぁ言う前に解ると思う。
(ねぇねぇヒールさん!あれは一体なんですか!?)
 これだ。時元の狭間からスクルドを連れ出してからこっち、物珍しいのかあれはなんだ、これはなんだとはしゃぎっぱなしだ。今だってそうだ。奴らとの戦いの準備のために買出しに行っている最中、スクルドは町を見てははしゃいでいる。それに付き合う俺の身にもなってほしい・・・・・・・・
(なぁスクルド、少し黙ってくれないか?)
(えー、いいじゃないですかぁ、こうして外の世界を見るのは本当に久しぶりなのですからぁ)
 この問答はもうこれで5回目だ。こいつは何度言ってもはしゃぐのをやめようとしない。
 狭間で見たときは女神という感じがしたが、それは黙っていたからだったようだ。ふたを開ければこれだ。神秘性の欠片もない。狭間の王も、こんな奴に惚れたのか・・・・・・・・ちょっと気の毒になってきた。
(ウルドヴェルダンディ、お前たちも何とか言ってくれよ)
 というわけでスクルドの姉の二人に救援を要請するのだが・・・・・・・・
(フフフ、いいじゃないですか、今日ぐらいスクルドの好きにさせても)
(せっかく外に出られたのだ。今回くらいはしゃいでもバチは当たるまい)
・・・・・・・・・・なんか、スクルドがあんな性格になった理由がわかったような気がする・・・・・・・



 買出しが終わり、ホテルに戻ったときは俺の体は疲労で鉛のように重かった。
 他の皆も帰ってくる。皆今日は買出しに出かけていたのだ。
 理由は簡単、今日は、宴会を開くのだから。
 騒がしい食堂、響く音は食器を重ねる音と飲み物が飲み干される音、食べ物を飲み込む音、そして・・・・・・・
「明日、お前の決着をつけられるといいな!」
「そうそう!絶対に終わらせようね!」
 陽気なジンの声、それに呼応するかのように声を高めるリディア、決戦前夜、皆で宴会をしようといったのはリディアだ。必ず全員生きて帰るという誓いの意味もこめた宴会、というよりも前夜祭だ。本番はすべてが終わった後、今度はミリアも交えてだそうだ。
「馬鹿な!この俺が、酒で負けるだと!?」
 向こうでは打ちのめされた表情のケルヴィン、向かいの席に座っているのは相変わらず笑顔のクロノ、飲み比べをしていたらしい。もっとも、勝敗はもう決したようだが。
 皆が笑顔でいられる時は、とても大切なのだと思う、そこにミリアが加われば、文句はない。
 不意に、そう思った。


 事の発端は今日、俺が時元の狭間から帰ってきた後、ウルドたちが時渡りの儀式を始めようとしたときのことだ。
「な!?ば、馬鹿な・・・・・・」
 驚愕のウルドの声、何かあったのか?
「どうした?ウルド」
「クロノスゲートが、開かない」
「なんだって?」
 クロノスゲート、俺たちが時を渡るためにはこれが絶対不可欠だ。それが開かないと言う事は・・・・・・・・
「ま、まさか・・・・・・」
「ああ、すまぬヒール、時渡りができん」
「な!?」
 めまいを感じた。たまらずその場に座り込む。
 それじゃぁ、俺は一体、今までなにをしてきたんだ・・・・・?
「大丈夫ですよマスター、まだ方法はありますから」
「え?」
 ヴェルダンディの言葉に思わず顔を上げる。
「本当か!?」
「はい、ですが、この方法ではかなりの困難な道が待ち構えています。それでもやりますか?」
 ヴェルダンディの言葉に嘘は感じられない。ならばやることはひとつだ。
「かまわない、教えてくれ」
 そう、ためらう理由など、何もない。
「簡単なことですよヒールさん、この時代に存在するルシファーを完全に消し去ってしまうんですよ。それこそこの歴史上から」
「なに?」
 スクルドの言葉に思わず眉を潜める。どういうことだ?
「つまり、この時代でお前たちがルシファーのところに乗り込みルシファーを倒す。その際、必ず止めは我らでさすのだ。後は我らに任せてくれればいい。時食いと同じく、奴のときを消し去ってくれよう」
 なるほど、つまり、ルシファーを倒せば奴をこのときから消し去ることができる。結果的に奴は存在しないことになるから、ミリアは存在できる、か・・・・・・・だがそれにはひとつの疑問が浮かび上がる。
「我らで止めを刺せって、どうやって?」
 そう、ウルドたちは3人いる。通常、決闘で攻撃できるモンスターは1回につき1体、3体の同時攻撃など、できるわけがない。
「大丈夫ですわ、なぜなら、私たちがもともとはひとつだったのですから」
「なに?どういうことだ?」
「言葉通りですよ。私たちをヒールさんの場にそろえたらそれで条件クリアーです。後は私たちがやりますから」
「そうだ、そして我らは再びひとつになる。そしてそのときこそ、3つに分かれた我らの真の力が発揮される」
「真の力?」
「うむ、我らは過去、現在、未来を司る運命の女神、もともとは一人でそのすべての時を司っていたのだが、最高神オーディン様によって3人に分けられたのだ。そのあまりに強い力を分散するために。もっとも、そのせいかどうかは知らぬが我ら個々の力はかなり制限されてしまったがな」
 なるほど、それでレヴァイアサンと効果の差があんなにあったのか。
「じゃぁ、ルシファーをお前たちで止めを刺せばいいのか?」
「うむ、だがそれは容易なことではない。ルシファーはもちろん、奴の部下である罪達も侮れぬぞ」
「わかってるさ、それでも俺は進む、迷いはない。どんなことがあっても立ち止まらないと決めたからな」
「そうか」




 夜は更けていく、騒ぎは終わらない。
 そして、運命の朝がやってくる・・・・・・・・



あとがき
ツキ「やっぱり異世界物語ものだと決戦前夜のイベントは欠かせませんよね」
ヒール「つってもほとんど回想だったけどな」
ツキ「細かいことは、気にしない」
ヒール「細かくはないと思うけどな」
ツキ「さてと、次回から決戦ですが、意気込みは?」
ヒール「勝つ、絶対にだ。他に言葉は要らないだろ?」
ツキ「それは頼もしい、さてと、今回はここまでにしましょう」
ヒール「そうだな、それじゃぁ、またな」
Date: 2004/07/05


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