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願い事

                                       取り戻すと誓った、たとえ、すべてを投げうっても・・・・・・
相互リンク
タイトル 作者 感想
>決☆闘☆王〜JUST DUEL〜 ひな様 ひな様の書いてらっしゃる小説です。ユニークなキャラやオリカが多く、また、鬼などの人外の存在なども多く登場するので楽しめる物語です。まだ始まったばかりなのでぜひ呼んでみてください。
>Nothing Venture.Nothing gain ファラオ様 ファラオ様の2作目です。王道ラブコメ要素とシリアスな場面の使いこなしがすばらしく、読んでいてどんどん引き込まれます。まだ始まったばかりなので読むなら今です。
>Cursed Doom 青眼様 青眼様の2作目の短編小説です。まだ始まったばかりなのですが今回はモンスターが実体化するようなので今後の展開にかなり期待できます。
>遊戯戦闘記〜時空物語〜 のばら様 文章の組み立てがすばらしく、カードの効果の表現方法もうまく、とても読みやすいです。また、決闘の展開や、その間に入る物語などもこっており、決闘とは別に、魔法などの設定もあるので決闘以外の部分も楽しめます。必見です。
>Again and Again GENMA様 GENMA様の2作目です。これもマガジンで人気連載中のエアギアをベースにした物語で、かつて無敗のリーダーだった主人公が、再び頂点を目指す様を描いた物語で個人的にかなりお気に入りです。
>Dream World カズト様 事故にあったことが原因で不思議な世界へと流れ着いてしまった主人公の七草 リュウカは、同じくこの世界に流れ着いていた兄を探すたびに出る。このサイトでかなりの人気を誇る小説です。現在100話を超えている大作です。ぜひ一度読んでみてください。
>精霊戦争 新装版 prism様 ここのサイトの小説の中で個人的に一番好きな小説です。精霊という特殊なカードが多数登場し、小説内での人間ドラマや王道のラブコメ要素も入っているのでお勧めの一品です。ここのサイトに来たからには一度は読むべきだと強く勧めます。
>魔法伝説〜Magical Legend〜 完全版 GENMA様 マガジンで人気連載中のネギまをベースとした小説で、ストーリー、決闘共にかなり充実しています。また、女キャラが他に類を見ないくらい多く、結構新鮮な感じがします。読んでみて損は絶対にありません。
>真世界を握るカード 青眼様 新たに改装された世界を握るカードです。以前と違い、始めから登場するキャラが多く、展開も違ったものになっています。そして何より最大の違いは主人公がふたりいることでしょう。まだ始まったばかりなので旧版を読んでなかった人も呼んでみることをお勧めします。
天津五柱神 yamato様 ゲームの世界に閉じ込められてしまった20人の生徒たち、彼らが生きて帰ることを目標に冒険していく様が面白おかしく描かれています。また、共鳴やライフ変動などに独自のルールが練りこまれており、かなり考えられていることが伺われます。見て損はありません。
遊戯王小説大賞2004

ACT80:歪んだ愛が、終わる時 2004/07/04
ACT79:空虚なる王 2004/07/02
ACT78:狭間の王 2004/07/02
ACT77:過去と現在 2004/07/01
ACT76:牙をむく女神 2004/06/30
ACT75:映し鏡 2004/06/30
ACT74:影 2004/06/29
ACT73:決意の夜 2004/06/29
ACT72:嘘つき 2004/06/28
ACT71:大食と怠惰 2004/06/25


ACT80:歪んだ愛が、終わる時
 ハニエルのダイレクトアタックで俺と奴のライフ差はゼロになった。加えて奴は俺にダイレクトを決められたという怒りからやや冷静な判断ができない出る。
 この隙に付け込めれば、決着はもう間近だな・・・・・

ヒールLP1000手札手札5枚
場 生命の天使ハニエル(攻撃表示)
伏せ なし

狭間の王LP1000手札4枚
場 グリード(発動中)
伏せ なし

生命の天使ハニエル 光属性 ☆8 天使族:効果
ATK0 DEF2300
このカードは通常召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分と相手のライフ差分アップする。
このカードが特殊召喚されたターン、自分はモンスターを通常召喚できない。

「はぁ・・・・・・はぁ・・・・・おのれ、下郎が・・・・・・ッ!」
「ハッ、吠えるなよ王様、楽にやろうぜ」
 さてと、やつと俺のライフが並んだから、ハニエルの攻撃力は0になっちまったからな、ここは何かしらの防御手段を立てておくべきだな。
「俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ」
 1枚のリバースカード、当然、ハニエルを守護するためのものだ。
「余のターンだ!ドロー!」
 初めて、奴が気合を入れてドローした。
「余のカードは魔導戦士ブレイカー!こいつを召喚する!」
 現われたのは、マジックブレイクの特殊能力を持つ魔法使い族モンスター、厄介な・・・・・・・
「ブレイカーの効果を発動!こやつの上に乗っているマジックカウンターを除外し、貴様のそのリバースカードを破壊してくれる!」
 ブレイカーの周りをただよっていた光の球が弾丸となって俺のリバースを襲う!
「チェーン!和睦の使者!」
 光の弾丸が俺のリバースを射抜く一瞬前、リバースが翻っていた。
「これで戦闘ダメージは無効化だ」
「おのれぇ・・・・・・カードを1枚セットしてターンエンドだ!」
 苛立つ狭間の王、よしよし、奴の精神状態は今、非常に不安定だ。このまま一気に決めることができれば・・・・・・
「俺のターンだな、ドロー!」
 カードを引く、引いたカードは強欲な壷、本来なら迷わず使うところだが、今奴の場にはグリードが存在している。ここで使った場合、このターン内で決着をつけなければ俺の負けだ。
 そんな賭けはできない。
「俺はハニエルを守備表示に変更し、さらにモンスターをセットしてターンエンドだ」
 ここで壷は使えない。だからここは守りに入るしかない。ライフが後わずかなのは、俺も同じなのだ。
 だが勝算はある、裏側守備モンスターはマシュマロンだ。うまくいけば、このターンで終わる。
「余のターンだな、ドロー」
 カードを引く狭間の王、さぁ、攻撃するならきやがれ。
「フン、まぁいい、余はブレイカーを生贄にささげ、雷帝ざザボルグを召喚!」
「なに!?」
 ザボルグだと!?
「ザボルグが生贄召喚されたとき、フィールド上のモンスターを1体、破壊することができる。これで余は貴様の裏側守備表示のモンスターを破壊する!」
 ザボルグの体から雷が放たれる。雷は矢となって俺の守備モンスター、マシュマロンを打ち抜いた。
「ほう、マシュマロンだったか、危ないところであったわ。ターンエンドだ」
「俺のターン!ドロー!」
 引いたカードは戦乙女の祝福、よし、最高のカードを引き当てた。あのリバースはおそらくあのカードだからこれで俺の勝ちだ!
「俺は戦乙女の祝福を発動するぜ」
「そうはさせん!リバースカードオープン!神の宣告!」
 翻るリバース、だがそんなこと、承知の上だ。なにせ、読みきっていたのだからな。

戦乙女の祝福:通常魔法
自分の墓地にある天使族モンスターを任意の枚数除外する。(最大4枚まで)あなたは次のうちどちらかひとつの効果を選ぶ。
●除外したカードの数だけカードをドローする。
●除外したモンスターのレベルの数×200ポイントライフを回復する。

「フ」
「なにがおかしい?」
「いやなに、ここまで思い通りにいくとは思わなかったからな」
「なんだと!?」
「王様よ、あんたの敗因を教えてやるぜ、それは絶対的な経験不足だ。だからカードを読めず、そして相手にカードを読まれやすい。そのリバースカードが神の宣告であることは読んでいた。この状態で、伏せておいて効果的なカードはミラーフォースなどのモンスター破壊系罠カード、だがあんたの墓地に罠を無力化するサイコショッカーが眠っている。俺が死者蘇生を引き当てた瞬間、あんたは窮地に立たされるからな。とすれば、それを防ぐため、そして相手のあらゆる行動を1度だけ無効化できる神の宣告を伏せてるだろうと思ったが、まさかここまで当たるとはな」
「くっ・・・・・・ッ!」
 苦虫を噛み潰したかのような顔、図星だったようだな。
「これで終局だ!魔法カード、強奪!」
「な!?」
「言っただろ?あんたが神の宣告を伏せていることは読んでいたと。ならば、そんな状況でコントロール奪取タイプのカードを使うかよ!」
 ザボルグが俺のフィールドに移る。やつはもう、自分の身を守ることはできない。これにて終局だ。
「終わりだな、ザボルグの攻撃!ライトニングコレダー!」
 放たれる無数の雷の矢、それがすべて、狭間の王を射抜いた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」
 絶叫と共に、王の体が崩れ落ちる。

ヒールLP1000
狭間の王LP1000→0

 だがそれでも、奴はまだ生きていた。なんという執念か、体を焼かれてもなお生き残り、ほとんど動かない体を引きずり、スクルドのほうへと向かっていった。
「スクルドよ・・・・・・お前は、誰にも、渡さん・・・・・・・・スク・・・・・ルド・・・・・・よ・・・・・・余を・・・・・愛してくれ・・・・・・・」
 俺は黙って、狭間の王の頭に銃口を合わせる。
「王様よ、あんたのやっていることは一方通行の愛の押し売りさ。そんなんじゃ、誰もあんたを愛してくれやしない。悪いが、スクルドはもらっていくぜ。じゃぁな、俺は信じちゃいないが、もしも生まれかわりってのがあったなら、今度は独りにはならないといいな」
 引き金を引く。それが、この歪んだ愛を終わらせる鐘の音となった。
 愛するがゆえに愛するものを踏みにじるこいつと、愛するがゆえに、他のさまざまなものを踏みにじっていく俺。そこにどんな違いがあるのだろう?
「ウルド、ヴェルダンディ、そのままでいいから聞いてくれ」
 だから俺は、こんな世迷いごとを口にしたのだろうか・・・・
「俺は、狂っているか?こいつのように・・・・・・」
(さてどうだろうな、それを我が答えることはできん。だがすべての生命はどんな形であれ他の生命を踏みにじっている。お前のそれも、そのことと大差はないように思えるぞ)
(その通りです。たとえ人に狂っていると言われようが、それでも、自分の信じた道をまっすぐに貫くことができればいいのだと思いますよ?)
「・・・・・・・・そうか・・・・・・・」
 らしくなかったな、たとえ狂っていようがいまいと、俺は俺の信じた道を行く。それだけだったな・・・・・・・・・・・



今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/07/04


ACT79:空虚なる王
 その王には、何もなかった・・・・・・
 いつからそこにいたのか、それは王自身にもわからなかった・・・・
 王は、そこからそこに出ることはできなかった。
 そして、王はいつも独りだった・・・・・・・
 時折ここに迷い込む旅人たちは、みなここにたどり着く前に、自らを映し出す鏡の罠には待って、死に絶えてしまった。もとより、この鏡の罠を突破してここを訪れたのは、銀髪の少年を含めても五指で事足りる。
 王は、何もすることがなかった。それ故にか、彼はここで朽ちていったものたちのカードを集め、デッキを作り時を過ごしていた。
 そんな時、彼の元にあるひとりの女神が迷い込んだ。
 金色の髪、透き通るような白い肌、純白の翼、その身を守るかのように包み込んでいる深緑の鎧。
 彼は、おそらく生涯ただ一度、この女神に恋をした。

――――――――彼女を、もっと見ていたい。

――――――――彼女を、そばにおいておきたい。

――――――――彼女を、自分のものにしたい。

 生まれ着いての王だった彼は、彼女を拘束し、それを愛することだと思い込んでいた。
 もとより、常に独りであった王は、人の愛し方すら、解らなかったのだ・・・・・・・




ヒールLP5000手札6枚
場 デュナミスヴァルキュリア(攻撃表示)、封印の天使シルエル(裏側守備表示)、ケルベク(裏側守備表示)
伏せ 2枚

狭間の王LP8000手札5枚
場 魂を狩る死霊(裏側守備表示)、黒き森のウィッチ(裏側守備表示)、怨霊の戦乙女―シャドウヴァルキリー―(攻撃表示)
伏せ なし

怨霊の戦乙女―シャドウヴァルキリー― 闇属性 ☆6 天使族:効果
ATK2100 DEF1700
このカードは悪魔族としても扱う。このカードがドローフェイズ以外で手札に加わったとき、このカードを場に特殊召喚することができる。

「・・・・・・クソ」
 思わずしたうち、正直、舐めていた。こいつは、俺の想像以上に強かった。
「フフフ、余のターンだな、ドロー」
 最初の怒りはどこへやら、奴はもう落ち着きを取り戻していた。
「手札から魔法カード、強欲な壷を発動させる」
 ドロー強化の魔法カード、だが今はグリードが発動中だ。ここでドローをしてしまっては、エンドフェイズで奴はダメージを負うことになるが・・・・・
「魂を狩る死霊を生贄に捧げ」
 生贄召喚、しかし、わざわざ戦闘では破壊されない死霊を生贄にささげるだと?一体、何を考えてやがる・・・・・
「来るがいい!人造人間サイコショッカー!」
「な!?」
 現われたのは、罠無効化効果を持つ上級機械族モンスター、機械族の癖に超能力を使えるなんていう矛盾だらけのモンスター、厄介な・・・・・・・・・
「さらに、裏側守備表示の黒き森のウィッチを攻撃表示に変更し、手札から魔法カード、黒死病を発動させる」
 黒死病?聞いたことのないカードだ・・・・
「な!?」
 驚愕、俺の裏側守備モンスターたちが次々に消滅していった・・・・・・・
「黒死病は、すべての場に出ている裏側守備表示モンスターを抹殺し、さらにその持ち主に500ポイントのダメージを与えるのだ。さぁ受けるがいい、死に到る病の苦痛を!」
「くぅ・・・・・・・ッ!」
 体を駆け巡る激痛に歯を食いしばって耐える・・・・・・ひざを折りそうになるがそれだけは何とか耐える。ここで倒れてしまったら、たぶんもう立ち上がれない。

黒死病:通常魔法
すべての場に出ている裏側守備モンスターを破壊し、その持ち主に500ポイントのダメージを与える。

ヒールLP5000→4000手札6枚
狭間の王LP8000手札4枚

 まずいな・・・・・・俺の守備モンスターがすべて破壊されてしまった。このままでは・・・・・・ッ!
「いくぞ!シャドウヴァルキリーでデュナミスヴァルキュリアを攻撃!切り裂け!シャドウヴァルキリー!」
 シャドウヴァルキリー、見た目は普通の鎧を着たヴァルキリーとなんら変わらない、その翼が黒いことを除けば。
 シャドウヴァルキリーがその身を影へと変化させる。そのまま移動、そしてヴァルキュリアの背後に回り再び実体化する。
 あまりのことにヴァルキュリアの反応遅れる。その一瞬が、彼女にとっての命取りだった。
 次の瞬間、彼女の純白の翼は赤く染まり、彼女の胸からは、黒い刃がはえていた。
「クッ!」
 超過ダメージが俺を襲う、だがこんなものは微々たる物だ。次から来る攻撃に比べれば。
「さらに!サイコショッカーの攻撃!サイコエナジーショック!」
 放たれる電磁の球、それが俺の体に触れる瞬間、リバースカードを発動させた。
「リバースカードオープン!スケープゴート!」
 俺を守るように現れる4体の眠れる羊、とりあえず、これでこのターンは凌げるはずだ。
「チッ、小癪なまねを!サイコショッカー!ウィッチよ!奴の羊を破壊しろ!」
 命令通りに攻撃を繰り出す奴の僕たち、そして俺を守る羊は2体に減った。
「リバースカードを1枚セットし、ターンエンドだ」
 エンドフェイズ、本来ならここで奴は強欲の代償を支払うのだが、サイコショッカーの効果でグリードが無効化されたので奴にダメージはない。
「貴様ごときでは、余に触れることすらできん」
 自信に満ちた奴の声、それが無性に気に入らない。絶対に、突破口を開いてやる!
「俺のターンだ!ドロー!」
 引いたカードを確認、すぐさま手札に加える。
 落ち着け、冷静になって考えろ。この状況下で、奴を打破する方法を・・・・・・・・!
「・・・・・・ん?」
 まてよ?こいつは・・・・・・・・・
「そうか!」
 こいつなら、この状況を打破できる!
「何だ貴様、その顔は、まだあきらめてはいないのか」
「当然、だって・・・・・・」
 俺は不適は表情を作り言った。
「お前に俺が負ける理由がないからな」
 我ながら確信に満ちた声、見つけたぜ、この状況下を破り、あいつにダメージを負わせるとびっきりの方法を!
「まずは運試し、手札から魔法カード、モンスターゲートを発動するぜ、生贄に捧げるのは当然、羊トークンだ」
 場に巨大な門が現われる。門の扉が開かれ、そこに羊が1体、吸い込まれ、ゲートが閉じていく。
「さてと、ここからが運試し、通常召喚可能なモンスターが来るまで、カードをめくらせてもらうぜ」
 1枚目、サンダー・ブレイク、2枚目、サイクロン、3枚目、孤独な天使ネフィタル。
「あららこっちが来たか、まぁいいや、こっちのほうが好都合だしな。孤独な天使ネフィタルは通常召喚が可能だ。よってネフィタルを特殊召喚する!」
 再びゲートが開かれ、中から現われたのは翼こそ白いものの、黒い髪と瞳、そして闇のオーラを持つ孤独な天使、その闇は、主の命のひとかけらを消費して、すべてを飲み込んでいく。
「ネフィタルは、主の命のひとかけらを使い、すべてを飲み込んでいく。すべてを飲み込め!ネフィタル!」
 ネフィタルの体から闇が放出される。やがて闇はフィールド全体に行き渡り、すべての生命を摘み取っていく。

孤独な天使ネフィタル 闇属性 ☆3 天使族:効果
ATK1300 DEF800
このカードが特殊召喚されたとき、2000ライフポイントを支払いこのカードを生贄にすることでフィールド上の全モンスターを墓地に送る。

ヒールLP4000→2000手札6枚
狭間の王LP8000手札4枚

「なに!?」
 初めて、奴の表情に動揺が走った。このまま一気に詰め寄る!
「さらに!俺は手札から遺言状を発動させ、デッキからモンスターを召喚するぜ!」
 遺言状、散っていったモンスターの遺志を受け継がせるカードが発動し、デッキから新たなモンスターが召喚される!
「遺志を受け継ぎ来たれ!生命の天使ハニエル!」
 光が弾け、そして現われた天使は、金の髪に金の瞳、その身に纏うは白のローブ、純白の翼をはためかせ、手にした武具は透き通ったかのような輝きを放つ聖剣。生命を司るハニエルには性別はない。ハニエルは両性具有なのだ。その攻撃力、実に6000
「ば、馬鹿な・・・・・攻撃力6000だと!?」
「ハニエルは生命を司る天使だ。その攻撃力は、俺と相手のライフ差に比例する」
 今、俺と奴のライフの差は6000、それがそのままこいつの攻撃力となったのだ。
「いくぜ、ハニエルの攻撃!ライフ・レイ!」
 突きつけられる聖剣、その刃先から放たれるのは、生命の根源の光、それが奔流となって奴へと襲い掛かる!
「させん!リバースカードオープン!サンダー・ブレイク!これでその天使を破壊してくれる!」
 カード破壊の罠カード、だが残念だったな狭間の王、そいつの対策は万全だ!
「カウンター罠カード発動!盗賊の七つ道具!」
「なに!?」
 翻るリバース、1000のライフと引き換えに、あらゆる罠の発動を無効化する反罠(アンチトラップ)カード。盗賊の持つ七つ道具によって、奴が発動した罠は解除された。
 これで、奴を守るものはない。生命の光が、やつに直撃した。

生命の天使ハニエル攻撃力6000→7000

生命の天使ハニエル 光属性 ☆8 天使族:効果
ATK0 DEF2300
このカードは通常召喚できない。
このカードの攻撃力は、自分と相手のライフ差分アップする。

ヒールLP2000→1000手札5枚
狭間の王LP8000→1000手札4枚

「ぐぅわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 絶叫、攻撃力7000の直撃を受ければ誰でもそうなる。下手をすれば即死だ。
「ぐぅ・・・・・・・はぁ・・・・・・」
 いかなる執念か、奴はあろうことか、その攻撃に耐え切りやがった。
 上等、ならさらに追い詰めるだけだ。
「なぁ、王様よ。もう1度聞かせてくれねぇか?」
 俺は、なんでもない風に話しかけた。
「俺は、あんたにどうすることもできないんだっけ?」
「―――――――ッ!貴様ッ!」
 奴の顔が、怒気に歪んだ。


今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/07/02


ACT78:狭間の王
 フェイカーを倒してからというもの、しばらくこれといった罠もなかった。
 そして今、最深部へとたどり着いた。
「ここまでスクルドの姿が見当たらなかったから、たぶんこの扉の向こうなんだろうな」
 最深部の扉の前で、俺は一人呟いた。
 そして、その扉を押し開けた。
「ま、大体こんなことだろうと思ってたけどな」
 扉を開けた俺の目の前、そこに、鎖で体の自由を奪われ、貼り付けにされたひとりの女神の姿があった。
金色の髪に純白の翼、瞳の色は目をつぶっているためわからないがその顔はまだ少し幼さが残っていた。ようやく少女の域を出たばかりといったところか。そしてその身を包むは深緑の鎧、その姿は、鎖でつながれてもなお、その美しさを損なってはいなかった。
おそらく彼女がスクルドだろう。
 そしてもうひとり、貼り付けにされたスクルドの下に、黒いローブで体中を覆い隠した、ひとつの人影があった。
「む?だれだ?貴様は」
 声からして人影は男、奴の容姿を判別することができない。
「誰でもいいだろ?ただ、そこに貼り付けにされている女神様に用があってね」
「貴様、貴様も余からスクルドを奪わんとするものか・・・・・・ッ!」
 不意に、男の体から怒気と憎悪が放たれた。
「スクルドは余のものぞ!誰にも渡さん!」
 もの?奴は今、確かにスクルドのことをそう言ったな。心のどこかで、怒りが湧いてきた。
(奴め、我が妹を愚弄するか)
(これは、許すわけにはいきませんね)
 怒気を感じていたのは俺だけではなかったらしい、当然か、妹をもの扱いされて、怒らない姉がいるものか。
「ずいぶんな言い草だな、別にお前のものじゃあるまいに」
「黙れ!スクルドは余のものぞ!余はスクルドを愛しておる!同じく、スクルドも余を愛しているはずじゃ!」
 うわぁ・・・・・・こいつちょっとサイコ入ってるし・・・・・・ここまで決まってたら、説得は無理だな。
「鎖でがんじがらめにするのを、愛しているとは言わないんじゃないのか?」
「黙るがいい下郎!貴様ごときに発言権を与えた覚えはないわ!」
「別に俺はあんたに与えられるような権利なんてないんだがな・・・・まぁいい、とりあえず、お前のしていることは愛している人間のすることじゃないだろう。それではただの鑑賞物だ。そうやってお前は自分の独占欲を満たしていれば満足なのだろうが、俺もそいつに用があってね、悪いが、連れ出させてもらうぜ」
「貴様!余を愚弄するか!」
「ん?気に障ったか?ならば誤ろう。スクルドという愛玩動物を飼っているなんて、忘れてくれ」
 もちろん、俺は挑発をしているだけだ。こうしてやつを怒らせれば・・・・・・
「貴様、いいだろう。そう死に急ぎたいのなら、望みをかなえてやろう!」
 こうなる、これで決闘に突入すれば、やつを倒しやすくなる。
「余はこの狭間の王なるぞ!貴様のごとき下郎では、触れることすらできんと知れ!」
 そして、お互いにデッキを構える。
『決闘!』
 お互いの声が、重なった。

ヒールLP8000手札5枚
狭間の王LP8000手札5枚

「余の先行だ!ドロー!モンスターをセットし、カードを2枚セットしてターンエンドだ!」
 正体不明の3枚のカード、先行1ターン目の常套戦術だ。
「俺のターンだな、ドロー」
 激情するやつとは対照的に、努めてクールに、カードをドローする。やつのデッキが解らない以上、下手に出すのは危険か?だが悠長に構えていては、やつが先に上級モンスターを召喚してしまう危険性がある。
 ここは少々危険でも、攻めてみるか。
「俺もカードを1枚セットし、霊獣ユニコーン召喚!」
 俺の場に、銀色の美しい毛並みをなびかせた1頭の一角獣が現われる。その目が静かに、やつのカードを見つめていた。

霊獣ユニコーン 光属性 ☆4 獣族:効果
ATK1700  DEF1400
このカードが墓地以外から特殊召喚されたとき、このカードの攻撃力は700ポイントアップする。
このカードがカードの効果で破壊されたとき、自分はカードを1枚ドローする。

「ユニコーンで、その守備モンスターを攻撃!いけ!ユニコーン!」
 俺の声とほぼ同時、ユニコーンは軽やかな音と共に疾走、その自慢の角で守備モンスターを貫かんと突進する。
「甘いな、守備モンスターはサイバーポッドだ」
「な!?」
 驚くのも無理はない、サイバーポッド、ゲームを振り出しに戻してしまうファイバーポッドと並び、特殊な効果を持つポッドタイプのモンスターの中でも最強とされるモンスター、ひとたび表になれば場に存在するすべてのモンスターを破壊する厄介なカード、だがそいつは、そのあまりに強力な効果から禁じてとしてお封印され、この世界のどこにも出回っていないはず、それが、なぜ・・・・・?
「フン!貴様の世界ではもうこいつは存在していないようだが、ここは貴様たちの世界とは違う、はるか昔より、この時元の狭間に迷い込んできたものは大勢いた。そのものたちの中で、朽ち果てていったものたちの骸から、このカードを手に入れたに過ぎん」
 つまりやつは、俺のいた世界ではもう存在していないカードもいくつか持っているというわけか。厄介な・・・・・・
 サイバーポッドが表に翻り、俺のユニコーンが破壊される。
 互いに5枚カードをドローし、ドローカードを公開する。

ヒールのドローカード
●ケルベク
●精霊の施し
●デュナミスヴァルキュリア
●封印の天使シルエル
●ダグラの剣

挟間の王のドローカード
●魂を狩る死霊
●強欲な壷
●黒き森のウィッチ
●怨霊の戦乙女―シャドウヴァルキリー―
●苦渋の選択

 チッ、やつは魂を狩る死霊を引き当てた。こいつは、魔法効果には破壊魔法ではなくとも消滅してしまうほどに弱いくせに、実態がないため物理系攻撃を完全に無効化してしまう。しかもこいつぃは手札破壊効果まで持っているというおまけ付きだ。
 しかたなく、俺はデュナミスヴァルキュリアを攻撃表示に、残る2体を守備表示で場に出し、残りのカードを手札に加えた。
 やつはすべてのモンスターを守備表示にこれでやつはもう下級モンスターを特殊召喚し終えた。
「フン、甘い考えだな、いでよ!シャドウヴァルキリー!」
「なに!?」
 ばかな!?シャドウヴァルキリーは上級モンスターのはず!いや、それ以前に今は俺のターンだ、なぜシャドウヴァルキリーが!?
「シャドウヴァルキリーは、ドローフェイズ以外でドローしたとき、特殊召喚できるのだ」
 条件さえ満たせば相手のターンでも特殊召喚可能なモンスター、厄介な・・・・・・
「・・・・・俺はバトルフェイズを終了し、メインフェイズ2で手札から魔法カード、精霊の施しを発動させる」
 この魔法カードを発動したとき、俺の体を淡い光が包み込んだ。体に力が湧き上がる感覚、そしてそれだけではない、光がデッキにも浸透していき、2枚のカードが俺の手札に舞い込む。代わりに俺は手札のカードを1枚捨てる。
 精霊の施しは、天使の施しほどの性能はないが、その代わりライフ回復効果を付属しているドロー強化カードだ。
「カードをさらに1枚セットし、ターンエン」
「この瞬間、リバースカードオープン!グリード!」
「な!?」
 グリード、ドローフィズ以外でカードをドローしたとき、そのターンのエンドフェイズにドローしたカード1枚につき、500ポイントのダメージを与える永続罠カード。しまった、やつの狙いはこれだったのか・・・・・・・
 気づいたところでもう遅い、俺は今、エンドフェイズに入り・・・・・
「ぐぅ・・・・・・・ッ!」
強欲の代償を受けた。

ヒールLP8000→9000→5000手札6枚
狭間の王LP8000手札5枚

「なに・・・・・?」
 なぜだ、グリードはプレイヤーすべてに効果を及ぼす、なのになぜ、やつのライフが減っていない?
「不思議か?種明かしはこのカードだ」
 そう言って奴は、自分の墓地の一番上のカードを俺に見せた。
 ノーライフバリアー、そのカードには、そう記されていた。
「フフフ、ノーライフバリアーは、このターンに余に与えられる戦闘ダメージ以外のダメージをすべて無効化するのだ」
 つまり、このターン、ダメージを受けたのは俺ひとりというわけか。

封印の天使シルエル 地属性 ☆1 天使族:効果
ATK300 DEF200
相手が発動した罠、魔法カードの効果をこのカードを手札から捨てることで無効化できる。

精霊の施し:通常魔法
カードを2枚ドローし1枚捨てる。その後、自分は1000ライフポイントを得る。

怨霊の戦乙女―シャドウヴァルキリー― 闇属性 ☆6 天使族:効果
ATK2100 DEF1700
このカードは悪魔族としても扱う。このカードがドローフェイズ以外でドローされたとき、このカードを場に特殊召喚することができる。

ノーライフバリアー:通常罠
発動ターンのエンドフェイズまで、自分が受ける戦闘ダメージ以外のダメージはすべて無効化される。

「ククク、貴様ごとき下郎に、余のスクルドは渡さん」
 やつの狂気に満ちた目に、俺は微量の恐怖を感じた。


あとがき
リディア「うわー、変態の登場だ・・・・・」
ツキ「開口一番、いきなりすごいこと言ってくれますね」
リディア「でもさぁ、ねぇ・・・・・・・」
クロノ「確かに、おいたわしやスクルド様、よもやこのような変態に捕まっておいでとは・・・・・・」
ツキ「なんかすごい言われよう・・・・・・・・」
リディア「で、実際のところどうなのよ、性格はともかく、決闘の腕は結構高いように思えるけど」
クロノ「そうですね、ヒールさん、いきなりライフを離されてしまいましたからね」
ツキ「まぁ、王様ですから。それにやっぱり、愛は強ってことでしょうw」
クロノ&リディア「嫌な愛ですねぇ〜」
Date: 2004/07/02


ACT77:過去と現在
 真紅の鎧に身を包み、純白の翼を羽ばたかせ、黒い髪をなびかせながら、過去を司る運命の三女神の長女、ウルドが舞い降りた。
 その黒い瞳が、俺を見つめる。
「ば、馬鹿な・・・・・・・」
「何をそんなに驚いている?これはお前のデッキなんだ。当然、神が入っていてもおかしくはないだろう?」
「く・・・・・・・」
 まずいな、ウルドの強さは、今まで一緒に戦ってきた俺が一番よく知っている。
 今、女神が俺に、牙を剥く・・・・・・・

ヒールLP5500手札6枚
場 天空聖騎士レティス(攻撃表示)、マンジュ・ゴット(攻撃表示)
伏せ 2枚(王宮の勅命、聖なるバリア―ミラーフォース―)

フェイカーLP3100手札2枚
場 過去の女神ウルド(攻撃表示)
伏せ なし

天空聖騎士レティス 光属性 ☆8 天使族:儀式:効果
ATK3500 DEF3000
このカードは天空騎士への洗礼の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚されたとき、自分は1000の倍数分のライフを払ってもよい、相手の場に表側表示で存在する払ったライフいかの攻撃力を持つモンスターをすべて破壊する。
このカードが相手プレイヤーにダメージを与えたとき、自分はカードを1枚ドローする。
このカードが相手プレイヤーにダメージを与えたとき、与えたダメージ分自分はライフポイントを得る。

天空騎士への洗礼:儀式カード
天空聖騎士レティスの降臨に必要。自分の場か手札からレベル8以上になるようモンスターを生贄にささげる。その際、生贄には必ず天空騎士パーシアスを使用しなければならない。手札から天空聖騎士レティスを特殊召喚する。

過去の女神ウルド 光属性 ☆9 天使族:効果
ATK3000 DEF2600
このカードは通常召喚できない。自分の場の光属性モンスター2体を生贄に捧げて特殊召喚する。
このカードが戦闘によって受けるコントローラーへの戦闘ダメージはすべて0になる。このカードが破壊されたとき、このカードは自分のフィールド上に一度だけ特殊召喚できる。この効果で特殊召喚した場合、相手のフィールドのモンスターをすべてデッキに戻す。その後相手はデッキをシャッフルする。この効果はデュエル中一度しか使用できない。

「さてと、ウルドの攻撃の前に、そのリバースを破壊しておくか」
 そう言って奴は手札から1枚のカードを繰り出す。
「大嵐!これでお前のリバースを破壊するぜ!」
 巻き起こる旋風、それは刃となって俺のリバースカード、王宮の勅命を切り刻む。
 だが刹那、俺はリバースを発動し、大嵐を無効化しようとした。
 しかし・・・・・・・
「おっと、そうはさせねぇぜ、手札から速攻魔法、サイクロン発動!」
「な!?」
奴が手札から発動したサイクロンが刃となって俺の王宮の勅命を切り刻む。
 これで俺を護るものは何もなくなった・・・・・・・
「いくぜ!ウルドの攻撃!目標は天空聖騎士レティス!」
 フェイカーの言葉に従い、ウルドが天へと舞い上がる。
 そのまま急降下、レティスも迎え撃たんと剣を構える。
 一瞬の交錯、次の瞬間、ウルドは地にひれ伏した。
「・・・・・・・・」
 だがこれこそ奴の狙い。ウルドが破壊されようとも、戦闘ダメージは奴にはない。そして、破壊されたときこそ、ウルドは真の力を発揮するのだ。
「この瞬間、ウルドの効果を発動させる!蘇れ!過去の女神ウルド!」
 再び光が収縮し、過去の女神が舞い降りる。だが今回はそれだけにとどまらない。
「クロノスゲートを開け!ウルド!」
 ゴゴゴという重苦しい音を上げながら開かれるクロノスゲート、過去へと飛ばすゲートが開ききり、俺のレティスとマンジュ・ゴットは過去へと飛ばされてしまった。
「これでお前の場はがら空きだ。ウルドよ!奴にダイレクトアタック!エーテルマテリアル!」
 ウルドの剣の先端から放たれる光の奔流、それが俺の体を飲み込んでいった。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 体中を駆け巡る激痛、クソ!流石は神の一撃、きついぜ畜生が!
「く・・・・・・・」
 歯を食いしばって耐える、ここで意識を失うわけにはいかない!
「チ、しぶとい野郎だ。俺はこれでターンエンドだぜ」

ヒールLP5500→2500手札6枚
フェイカーLP3100手札0枚

「俺のターンだ。ドロー」
 痛みのためか、鋭くカードをドローすることができない。
 手札を見渡す。駄目だ、今の手札ではウルドの対抗手段がない。ここは耐え忍ぶしかない。
「俺はモンスターをセットして、ターンエンドだ」
「俺のターンだな、ドロー。まぁいいか、ウルドで攻撃!エーテルマテリアル!」
 放たれる光の奔流、だがその攻撃は、何かやわらかいものによってはじかれた。
「な!?」
「守備モンスターはマシュマロンだ。残念だったな」
 マシュマロン、こいつは戦闘では破壊されず、裏側守備表示のときに攻撃を受けた場合、相手に1000ポイントのダメージを与えてくれる優れたモンスターだ。

ヒールLP2500手札6枚
フェイカーLP3100→2100手札1枚

「チ、無駄な足掻きを、ターンエンドだ」
「俺のターンだ!」
 今はマシュマロンがあるからいいが、確か俺はデッキにシールドクラッシュのカードを入れたはずだ。俺を引かれたら負ける。ここで何か、起死回生となるものを引かなくては!
「ドロー!」
 神に対抗するには・・・・・・・・
「!」
 神しかない!
「まだ勝負はわからないぜ!偽者野郎!」
 引き当てた。俺のデッキに眠る、第2の神を・・・・・・・・・
「デッキのカードを6枚、ゲームから除外し・・・・・・」
 カードゲームは、時の流れに見立てることができる。
 デッキは未来、フィールドは現在、そして、墓地は過去。
 未来の力を借り、降臨せよ!
「現在の女神ヴェルダンディ!」
 舞い降りた女神は、蒼い鎧に身を包み、ウルドと同じく純白の翼を羽ばたかせ、白銀の髪を揺らしながら、その蒼い双眸でフェイカーを見据えていた。その手に握るは、美しく、繊細は装飾が施された巨大な槍、それが、実に彼女によく似合っていた。
 攻撃力は3000、ウルドと互角だ。
「ば、馬鹿な・・・・・・この土壇場で、神のカードを引き当てたというのか・・・・・ッ!」
「あら、マスター、あれはウルド姉さまではないのですか?」
 丁寧で、気品のある口調のヴェルダンディ、説明するのが面倒だな。
「そうだが違う、あれはウルドの偽者だ。ついでに言うと、あそこにいる俺も偽者だ。だから安心して倒してくれてかまわない」
 ちょっとはしょったが、大体あっているのだから問題はないだろう。
「そうですか、それでは、遠慮なくやらせてもらえますね」
 そう言って槍を構えるヴェルダンディ、その蒼い双眸は、まっすぐに偽ウルドを見つめている。
「ところでマスター、私の能力、ちゃんと使えこなせますか?」
「ああ、大体理解したし多分問題なく使いこなせるはずだ」
「解りましたわ。それではいきますよ!マスター!」
「ああ、ヴェルダンディ!魔導練成だ!」
「了解しました!」
 ヴェルダンディが両手を前にかざす。すると、彼女の両腕の間の空間が輝きだす。それと同時に、俺の墓地にも変化があった。俺の墓地にある魔法カードが2枚、その姿を光の球に変え、ヴェルダンディの周りを舞い始めた。
 やがて球は砕け、光の粒子となる。粒子はひとつに混ざり合い、いま、俺の手札に1枚のカードとして舞い降りる。
 次元融合、これが手札に舞い降りたカードの名前、ヴェルダンディの効果のひとつ、魔導練成、墓地の魔法カード2枚を代価とし、ゲームから除外されたカードを1枚、手札に加えるカード、1ターンに1度しか使用できないが、1度使えれば充分だ。
「いくぞ!手札から魔法カード、次元融合発動!」
 繰り出される魔法カード、そして、俺の場に2度目の生を許されたカードたちが舞い降りる。
「デュナミスヴァルキュリア、ヴァルキリーの騎馬兵、霊獣ユニコーン特殊召喚!」
 俺の場に、2人の戦乙女と1頭の霊獣が現われた。

ヴァルキリーの騎馬兵 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1900 DEF1300
このカードは、自分の場か墓地に存在するカード名にヴァルキリー、またはヴァルキュリアとついているカード1枚につき、攻撃力が100ポイントアップする。

霊獣ユニコーン 光属性 ☆4 獣族:効果
ATK1700  DEF1400
このカードが墓地以外から特殊召喚されたとき、このカードの攻撃力は700ポイントアップする。
このカードがカードの効果で破壊されたとき、自分はカードを1枚ドローする。

 霊獣ユニコーンは、墓地以外から特殊召喚されたときにその攻撃力を700ポイントアップさせる。また、ヴァルキリーの騎馬兵も、場か墓地に存在する同胞の数だけ攻撃力を増す効果を持つ。これで2体とも、攻撃力を上昇させることができた。

ヴァルキリーの騎馬兵攻撃力1900→2100
霊獣ユニコーン攻撃力1700→2400

「まだ終わりじゃないぜ、偽者野郎。ヴェルダンディ!グングニルの加護だ!」
「わかりました!」
 ヴェルダンディが手にした槍を空へと掲げる。すると俺の場に出ているマシュマロンが、光の球と化し、槍へと吸い込まれていく。

現在の女神ヴェルダンディ攻撃力3000→3300

「攻撃力が、上がった!?」
 これがヴェルダンディの第2の能力、自分の場に出ているモンスター1体を生贄にささげ、そのモンスターの攻撃力分、自らの攻撃力を1時的にアップさせる。ヴェルダンディはウルドのように突発的に強力な効果は持ってないが、安定性ならばヴェルダンディのほうが上だ!
「ヴェルダンディの攻撃!ストライクデヴァイス!」
 空高く舞い上がるヴェルダンディ、手にした槍を回転させ、穂先を偽ウルドへと向ける。やがて槍が大きな光を放ちだしたころ、ヴェルダンディがその槍を力強く投げ放った!
 槍は寸分違わずに偽ウルドを貫いた。
「な・・・・・・」
 呆然とするフェイカー、だがこの程度で終わらせるつもりはない!
「止めだ!いけ!俺のモンスターたちよ!」
 俺の命令と共に一斉に襲い掛かるモンスター、その怒涛の攻撃が、フェイカーから断末魔の叫びすら奪い取った。

現在の女神ヴェルダンディ 光属性 ☆9 天使族:効果
ATK3000 DEF2600
このカードは通常召喚できない。自分のデッキの上から6枚をゲームから除外して特殊召喚する。
1ターンに1度、自分の墓地にある魔法カード2枚をゲームから除外して除外されている自分のカードを1枚、手札に加えることができる。この効果で除外した魔法カードは、デュエル中、使用できない。
1ターンに1度、自分の場に出ているモンスター1体を生贄に捧げることができる。
エンドフェイズまで、生贄に捧げたモンスターの攻撃力分、このカードの攻撃力がアップする。

ヒールLP2500→500
フェイカーLP2100→0

「もう2度と出てくるんじゃねぇぞ、クソピエロ」
奴の死体にそうはき捨てて、俺はその場を後にした。


今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/07/01


ACT76:牙をむく女神
「クハハハハハハハ、なんだよ、こんなもんかよ俺!ざまぁねぇな!だから俺と一緒になれっていったのによぉ!」
 奴の哄笑が聞こえる。だが俺はほくそ笑んでいた。奴は今、完全に油断していた。
「あ〜いて」
 俺はゆっくりと立ち上がる。まだ体は痛むが、たいしたことじゃない。
「な!?馬鹿な!?」
 驚愕のフェイカーの声、気分がいいな。
「どうした?何をそんなに驚いているんだ?」
「馬鹿な!お前のライフは0になったはず!死んだはずだ!なぜ生きている!?」
 動揺のフェイカー、俺は不適な声で言ってやった。
「なにいってやがる、俺がいつ、負けたといったよ」
「なんだと?」
「よく見てみな」

ヒールLP4000

「な!?ライフが、0になっていない!?一体なぜ!?」
「よく考えてみろよ。俺自身ならば、解るんじゃないのか?」
「・・・・・・・」
 しばらく考えるフェイカー、そして思い当たる節があったのか、はっと顔を上げる。
「大天使の息吹か・・・・・・・」
「その通り」
 俺の墓地の1番上にあるカード、大天使の息吹、こいつは少し特別なカードだ。カードを何も伏せなければ一気に攻勢に出ると踏んだが、こうもうまくいくとはな。
 実を言うと、奴がソーラーレイを使ってくることはすでに読んでいた。出なければ、攻撃力の低い神聖なる球体なんかを攻撃表示で出してはこないからな。
「くそがぁ・・・・・・・」
 歯噛みするフェイカーに対して、俺は改めていってやった。
「まだ勝負は終わってないぜ」

ヒールLP4000手札6枚
場 なし
伏せ なし

フェイカーLP8000手札3枚
場 天空騎士パーシアス(攻撃表示)、創造の代行者 ヴィーナス(攻撃表示)、神聖なる球体×3(攻撃表示)
伏せ なし

大天使の息吹:通常罠
このカードは手札からでも発動することができる。
自分のライフが0になったときに発動可能、自分のライフを4000ポイント回復し、手札が6枚になるようにカードをドローする。

「さてと、確か、俺のターンだったな。ドロー」
 カードを引き手札に加える。これで手札は7枚、ライフの差はちょうど倍、だがこの程度、逆転するのは容易い。
「天使の施しを発動。カードを3枚引き2枚捨てる」
「チッ、嫌なカードを引きやがるぜ」
 引いた3枚のカードは強奪、ゾルガ、そしてマンジュ・ゴット。マンジュ・ゴットがきたか。これで形勢は逆転できるな。
 少し考え、俺はゾルガと2枚目のシャインエンジェルを捨てた。
「まずは魔法カード、強奪を発動させ、天空騎士パーシアスのコントロールをもらう」
「チッ」
 舌打ち、止めをさせなかったことが相当悔しいらしい。この心の隙に、付け込んでやる。
「そしてマンジュ・ゴットを召喚し、効果を発動させる」
 召喚された万の腕を持つ観音、その黒いからだが光りだし、その光がデッキへと浸透していく。
「俺は出来から天空騎士への洗礼を手札に加えるぜ」
 デッキから1枚のカードを抜き取る。これでピースは揃った。
 見ると奴の顔が青ざめている。これから俺がしようということを理解しているようだな。まぁ、俺なのだから当然か。
「覚悟はできてるか?手札から儀式カード、天空騎士への洗礼を発動させる!」
 俺の場を光が包み込む。パーシアスを中心に、光の渦が巻き起こる。光はパーシアスと、俺の手札にあった聖水の天使フェルエルを飲み込んでいく。
 光の渦が収縮し、同時に光も消えていく。
 そして、そこに立っていたのは、黄金の鎧に身を包み、4枚の翼をはためかせ、風にたなびく黄金の髪の間から覗かせる翡翠色の双眸をもち、白銀の鎧でその実を強化した天空の名馬を駆るひとりの天空騎士の姿だった。
「天空聖騎士レティス、降臨!」
 迸る闘気が、刃となってフェイカーに浴びせられていた。
「く・・・・・・・・」
「そして!レティスの効果発動!俺の命のかけらを代価とし、レティスよ、その力を示せ!」
 俺の言葉に従い、レティスが手にした剣を空へとかざす。剣の先端が光だし、それが天へと伸びる。まるで、1本の巨大な剣のように。
 次の瞬間、レティスはその光の剣を横一文字になぎ払った。何の変哲もない1撃、たったそれだけのはずなのに、フェイカーのモンスターたちは全滅していた。
「く・・・・・・く・・・・・・」
「いくぞ!レティスのダイレクトアタック!」
 レティスが白銀の鎧で武装した名馬を疾走させる。
 すれ違いざま、まさに芸術的なタイミングでフェイカーのわき腹をなぎ払う。
「かは!」
 吹き飛ばされるフェイカー、だがこれで終わらせるつもりはない。一気に攻め込む!
「さらに!マンジュ・ゴットで追撃の一撃!いけ!マンジュ・ゴット!」
 続けてマンジュ・ゴットのその万の拳が繰り出される。
「ぐぅ・・・・・・ッ!」
 歯を食いしばって耐えるフェイカー、姿形が同じなだけにちょっと気分が悪い。だからといって容赦はしないけど。
「さらにレティスの特殊能力が発動する。俺はカードを1枚ドローし、さらに今お前に与えたダメージ分、ライフを回復させる」

天空騎士への洗礼:儀式カード
天空聖騎士レティスの降臨に必要。自分の場か手札からレベル8以上になるようモンスターを生贄にささげる。その際、生贄には必ず天空騎士パーシアスを使用しなければならない。手札から天空聖騎士レティスを特殊召喚する。

天空聖騎士レティス 光属性 ☆8 天使族:儀式:効果
ATK3500 DEF3000
このカードは天空騎士への洗礼の効果でのみ特殊召喚できる。
このカードが特殊召喚されたとき、自分は1000の倍数分のライフを払ってもよい、相手の場に表側表示で存在する払ったライフいかの攻撃力を持つモンスターをすべて破壊する。
このカードが相手プレイヤーにダメージを与えたとき、自分はカードを1枚ドローする。
このカードが相手プレイヤーにダメージを与えたとき、与えたダメージ分自分はライフポイントを得る。

聖水の天使フェルエル 水属性 ☆3 天使族:効果
ATK800 DEF1200
このカードは1ターンに1度、裏側守備表示にすることができる。このカードがリバースしたとき、すべてに場に出ているモンスター1体につき、自分は500ライフポイントを得る。


ヒールLP4000→2000→5500手札5枚
フェイカーLP8000→3100手札3枚

「俺はこれでターンエンドだ」
 このターンで形勢は完全に逆転した。このまま一気に追い詰める!
 そういった俺の出鼻をくじくかのように、天から光の剣が檻となって降り注いだ。
「これは!?光の護封剣!?」
「その通りよ、こいつで攻撃は封じさせてもらったぜ」
 そう、俺のモンスターたちを封じ込めたのは紛れもなく、この最上級防御カードだった。
 それからお互いに攻め手がなく、数ターンが経過した。
「・・・・・・よし」
 引いたカードを見て思わず声が出る。引いたカードは王宮の勅命、もともともう少しでこの鬱陶しい光の剣も消えるが、奴の場に何もない今が最大のチャンス。
 俺は勅命と、もう1枚、ミラーフォースをセットしてターンを明け渡した。
「俺のターンだな、ドロー。へへ、きたぜ、これが俺の切り札だ」
 切り札。その言葉に俺は自然と身構える。
「いくぞ、まずはヴァルキリーの切り込み隊長を召喚し、効果を発動させてデュミナスヴァルキュリアを特殊召喚する」

ヴァルキリーの切り込み隊長 光属性 ☆4 天使族:効果
ATK1700 DEF1600
このカードの召喚、特殊召喚に成功したときレベル4以下の天使族モンスター1体を手札から特殊召喚することができる

 奴の場に2体の光属性モンスターが現われた。まさか・・・・・・
「いくぜぇ、2体の光属性モンスターを生贄にささげて、きなぁ!過去の女神ウルド!」
 奴の場に、過去を司る厳格なる女神が舞い降りた。


あとがき
ツキ「ふ〜テスト前に書き貯めするので更新スピードを上げてみましたが、疲れますね」
ケルヴィン「当然だ。それはそうと、神が敵に回ったが、神は1枚した存在しないんじゃないのか?」
ツキ「はい、本来ならそうです。しかし、今ヒールが戦っているヒールは偽者ですから。当然、あの神も偽者です。もっとも、効果や能力値は本物と変わりませんが」
ケルヴィン「なるほどな、ここからがヒールの正念場というところか」
ツキ「そういうことです。それでは今日はもう閉めますよ」
ケルヴィン「ああ、それではまた会おう」
Date: 2004/06/30


ACT75:映し鏡
 もう俺は後戻りはできない。ただ前へ進むのみ。
 たとえ俺自身が俺の前に立ちはだかろうとも、俺は俺すらも越えていく。

ヒールLP8000手札5枚
フェイカーLP8000手札5枚

「俺の先行!ドロー!」
 カードを引きすばやく引いたカードを手札に加える。
 奴は俺自身、デッキも俺と同じなのか、それとも・・・・・・
「リバースカードを1枚セット、そしてシャインエンジェルを召喚してターンエンドだ!」
 俺の前に、中肉中背の男天使が舞い降りる。攻撃力1400、少々頼りないがこいつに備わっている遺言能力はなかなか便利だ。
 たとえ奴が遺言能力を阻止しようとモンスター破壊タイプのカードをつかってこようとも対応手段は用意してある。
「俺のターンだな、ドロー。お前がシャインエンジェルでくるなら、こいつだな、来な!シャインエンジェル!」
「な!?」
 奴の場に現われたのも俺と同じシャインエンジェル、まさかこいつのデッキは・・・・・
「何を驚く必要がある?俺はお前なんだぜ。当然、使いデッキも同じに決まってるだろ?」
 偽者の分際で、ずいぶんと悪趣味だな・・・・・
「シャインエンジェル!攻撃だ!」
「チッ、迎撃しろ!シャインエンジェル!」
 2人の光の天使が、それぞれに光の魔法を矢と変えて討ち放つ!矢はそれぞれをすり抜けてそれを放ったもの、すなわちシャインエンジェルを討ち抜いた!
『効果発動!』
 お互いの言葉が重なる。
 光の天使の遺言効果が発動し、お互いの場に新たなモンスターが召喚される。
『命の巫女ウィセリア!』
「な!?」
 あろうことか、お互いが召喚したモンスターも同じだった。
 姿形、デッキどころか思考までも同じとは、つくづくいけすなねぇ野郎だ。

命の巫女ウィセリア 光属性 ☆1 魔法使い族:効果
ATK0 DEF0
このカードがゲームから除外されたとき、このカードの持ち主はカードを2枚ドローする。

「さて、俺はこれでバトルフェイズを終了するが、ここで手札から魔法カードを発動させておくぜ」
 1枚のカードを繰り出すフェイカー、それは・・・・・
「異次元放逐!こいつで互いのウィセリアを除外するぜ!」
 やはり、思考能力が俺と同じなら、ウィセリアを召喚した時点で異次元放逐があることは明白、そして、奴のターンで異次元放逐の発動を許し、ウィセリアの効果でドローさせるのは危険だ!
 俺は躊躇なく、リバースを発動した。
「そうはさせねぇ!リバースカードオープン!隠されし罠!」
「なに!?」
 翻るリバース、そして奴が発動した異次元放逐は突如現われた対魔術(アンチマジック)の呪印によって無効化された。
 俺の手札1枚を代償に・・・・・
「隠されし罠は、デッキから罠カードを1枚発動する権利を得る。こいつの効果で俺はデッキからマジック・ジャマーを発動し異次元放逐を無効化させるぜ。もっとも、俺はコストとして手札を1枚失いがな」

異次元放逐:速攻魔法
発動プレイヤーは自分の場のモンスターと相手の場のモンスターを1体ずつ選択する。選択されたモンスターをゲームから除外する。

隠されし罠:通常罠
このターン、自分は1度だけ、デッキから罠カードを発動することができる。このカードはデッキに1枚しか入れることができない。

 だが変化はそれにとどまらなかった。俺の墓地から1つの腕が這い出したのだ。
「なに?こいつは・・・・・」
「俺はマジック・ジャマーのコストとして、こいつを捨てたのさ」
 墓地から這い出してくる1匹の醜悪な悪魔。そいつが守備形態で特殊召喚された。
「狡賢い悪魔特殊召喚!こいつは、破壊されずに墓地に送られたとき、その狡猾な知恵を働かせて何度でも蘇ってくるぜ!」

狡賢い下級悪魔 闇属性 ☆3 悪魔族:効果
ATK800 DEF500
このカードが破壊されずに墓地に送られたとき、このカードを自分のフィールド上に特殊召喚する。この効果によって特殊召喚された場合、このカードは攻撃することができない。

「チッ、俺はカードを1枚セットして、ターンエンドだ」
 伏せられる正体不明のカード、間違いなく罠だろう。
「俺のターンだな、ドロー」
 あのリバースカードは間違いなく罠だ。罠と知りながら攻撃を仕掛けるか、それとも様子を見るか・・・・・
「手札から魔法カード、異次元放逐を発動させる。お互いの命の巫女ウィセリア除外!」
 命を見守るはかなき巫女がその世界から姿を消していく。
『効果発動!』
 またも重なるふたりの声、命の巫女がその身と引き換えに与えてくれるチャンス、これを逃すわけにはいかない。
 よし、引いたカードは天空騎士パーシアス、この人馬一体の天使は、攻撃力こそ1900とレベル5にしてみれば低いが、ドロー効果に貫通効果は使い勝手がいい。ここは攻めてみるか・・・・・
「俺は狡賢い悪魔を生贄にささげ、天空騎士(エンジェルナイト)パーシアスを召喚するぜ!」
 まばゆい光と共に舞い降りる人馬一体の天空騎士、その目がまっすぐにフェイカーを見つめる。
「さらに手札から装備魔法、ダグラの剣をパーシアスに装備させ、攻撃力を500ポイントアップ!」
 ドロー効果、貫通効果、そしてこの装備カードの追加によってライフドレイン効果がプラスされた。

天空騎士パーシアス攻撃力1900→2400

 破壊されずに墓地に送られたので狡賢い悪魔は再び特殊召喚される。もちろん、攻撃はできないので守備表示だ。
「パーシアスでダイレクトアタック!切り裂けパーシアス!」
 天空騎士の一撃がフェイカーへと下る!
「甘いぜ!リバースカードオープン!剣の巨壁!」
「な!?」
 パーシアスの目の前に突然現われる巨大な壁、それがすべて剣でできていて、その刃がすべてパーシアスのほうを向いていた。
「しまった!」
 パーシアスの攻撃は止まらない。そのまま串刺しにされてしまった。
「ぐわ!」
 剣の巨壁の効果はそれだけではない。コストがでかいとはいえ、永続効果を持っているうえに破壊したモンスターの攻撃力の半分が、ダメージとしてプレイヤーに与えられるのだ。

剣の巨壁:永続罠
相手攻撃モンスターすべてを破壊し、そのときの相手攻撃モンスターの攻撃力の半分を、相手プレイヤーに与える。
自分のターンのスタンバイフェイズに3000ポイントを支払う。支払わなければこのカードを破壊する。

ヒールLP8000→6800手札3枚
フェイカーLP8000手札5枚

 クソ!厄介な・・・・・・
「俺はこれでターンエンドだ」
 リバースも何もなし、だが、今の俺にはこうするしかない。
「俺のターンだ、ドロー!まずは剣の巨壁を破棄し、魔法カード、使者蘇生を発動させる!」
「なに!?」
 蘇生カード!そんなカードが手札にあったのか!?
「俺はこいつでお前の天空騎士パーシアスを蘇生召喚するぜ!蘇れ!パーシアス!」
 奴の場に現われ俺に剣を向けるパーシアス。やばいな、こいつは・・・・・
「さらに!創造の代行者 ヴィーナス召喚!」
 奴の場に、創造を司る天使が現われる。だが奴が俺自身なら、俺はここで終わらせるつもりはない。
「解ってるよな!?俺はヴィーナスの効果を発動させる!1500ポイントのライフを支払い、デッキから3体の神聖なる球体(ホーリーシャイン・ボール)を特殊召喚!」
 奴の場に光り輝く3つの球体が現われる。これで奴のモンスターは5体。まずいな・・・・・・・
「さっさと決着をつけるぜ俺!すべてのモンスターでダイレクトアタック!」
 奴のモンスターたちが、俺へと襲い掛かってきた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 体中を駆け抜ける激痛、意識を保つので精一杯だ!
「ククク、パーシアスの効果でカードを1枚ドローし、最後にカードを1枚セットしてターンエンドだ」

ヒールLP6800→1800手札3枚
フェイカーLP8000手札3枚

「く・・・・・・俺のターンだ」
「ハハハハハ!てめぇに次のターンはこねぇよ!リバースカードオープン!ソーラーレイ!」
「な!?」
 直接ダメージの罠カード!?そんなカードも手札にきていたのか!?
 奴のモンスターから立ち上った5本の光の柱が、矢となって俺に突き刺さってきた。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
 光の矢に突き刺されて、俺はその場に倒れ伏した。

ヒールLP1800→0
フェイカーLP8000


あとがき
試験が近い、今のうちに小説を書きだめしておかなくては・・・・・
Date: 2004/06/30


ACT74:影
 さてと、今日はクロノがいないから俺たちは行動に移すことができない。
 各々自分の時間を過ごしているはずだ。
 さっき皆の部屋を回ってきたところ、ジンはデッキの調整、リディアは散歩、ケルヴィンは神殿のほうに定期報告。で俺は現在暇をもてあましていると・・・・・・・
 こうして暇をもてあましているのははっきり言って無駄に時間を浪費しているに他ならない。
 俺もデッキ調整でもするか・・・・・・



 デッキ構成を開始して数時間が過ぎたころ。俺のデッキは完成した。
「うし、完成」
 今までよりもさらにモンスター全体の攻撃力を上げ、よりコンボも組みやすくなった。
 細かなところは実戦を通して調節すればいい。
 そしてそれからしばらくして、朝から出かけていたクロノが帰ってきて皆を部屋に集めた。
「さて皆さん、スクルド様の居場所がわかりました」
 開口1番、クロノは結果だけを端的に報告した。
「どこだ?」
「それが、少々厄介なところにありまして・・・・・・・」
 言いよどむクロノ、一体どこにいるんだ?
「どこなんだ?はっきりいってくれ」
「ええ、時と時の狭間の空間、時元の狭間です」
「な!?」
 おそらくそこにいた全員が驚愕の声を上げただろう。時元の狭間、そこは過去、現在、未来のどこにも該当せず、またすべてに該当する異質な空間。並の人間では入るどころか門を見つけるだけでも難しい。
「そんな場所、どうやって行けばいいんだよ」
 ジンの言葉はおそらくそこにいる全員が頭に浮かべたことだろう。ただひとり、冷静な表情を崩さないクロノを除いては。
「大丈夫です。方法はあります」
 やはり、この男はいつも他のみんなよりも一歩先の事を考えている。
「僕の力を持ってすれば、時元の狭間への入り口をこじ開けることはできます。ただ問題は、門を開くことに全力を注がなければならないので、僕は門の向こう側に行くことはできません。そして、僕の力ではせいぜいひとり分の広さしか門を開けることができません。しかも、時元の狭間の中にはどんなことがあるのか、まったくわかりません」
 すべてが未知数の空間、か・・・・・・・関係ないな。
「俺が行こう。問題はない」
「ヒールさん、あなたならそう言うと思っていましたが、危険ですよ?」
「そんなもの、今に始まったことじゃない」
 そう、俺はもう、後戻りなどできはしないのだから・・・・・
「解りました。それではヒールさん、スクルド様をよろしくお願いします」
 そう言ってクロノは、例の光の剣を取り出す。
「いきますよ」
「ああ・・・・・・」
 一閃、空間を切り裂き、そのむこうにある時元の狭間への入り口をつなげる。
 後は、俺の仕事だ。
「任せておけ、必ずスクルドを持って帰る」
 躊躇することなく、その裂け目に飛び込んだ。



 目を開けるとそこには何もなかった。視界を埋め尽くすのは黒い闇、だがそれも一瞬、次の瞬間にはまぶしいほどの白い光が視界を埋め尽くす。
「ぐ・・・・・・」
 たまらず目をつぶる。そして光が収まったころ、目を開けると・・・・・
「な!?」
 驚愕の声、目を開けた俺の目の前にいた人物、それは・・・・・・
「よう、俺」
 俺だった・・・・・・・
「そんなに驚くことはないだろ?自分の顔なんざ、見飽きてるくらい見てるだろ?」
「どういう、ことだ・・・・・?」
 冷静に考えれば、これは時元の狭間の罠だろう。だが自分を見たショックからか、思考がまともに働かない。
「あいかわらず、茨の道を歩いているようだな」
 俺は、まだ語り続けていた。
「それが、どうした。これは、俺が選んだ道だ」
 それでも俺はかろうじて返答することができた。
「やめとけやめとけ、たった1人のためにここまですることはないって。女なんざ、他にいくらでもいるだろう?」
「なんだと?」
 その台詞が、やけに俺を刺激した。
「隠すなよ、心の中じゃそう思ってんじゃないのかよ。俺はお前の影、俺とお前はコインの裏表のようなもの。限りなく近い存在なんだからよ。俺たちの間で隠し事はなしにしようや。楽になりたいだろ?俺とひとつになれ、それでお前はあの女のことを忘れられる」
 俺は沈黙を守ったままだった。
「さあ、ひとつになろうぜ」
 だが俺は奴が差し出してきた手を無造作に跳ね除けた。
「な!?」
「ようやく思い出したぜ」
 ゆっくりと、銃に手が伸びる。
「お前、時々夢に出てくる道化か」
 銃をつかむとほぼ同時に奴の眉間に銃口を押し付ける。
「いったよな?来るたびに、殺してやると」
「むだだぜ、そんな銃じゃ俺は殺せない」
「どうかな?ここは夢の中じゃねぇ、現実だ!」
 同時に、引き金を引く。銃口から飛び出した弾丸が、奴の頭にくらいついた。
「死んだか」
 先を急ごう。
「おいおい、いきなり撃つかよ。ひでぇな・・・・・」
「な!?」
 思わず振り向く。そこには、傷ひとつ負っていないやつがいた。
「無駄だぜ、俺は影だ。俺を殺したかったら決闘で倒すしかねぇな」
「そうか、だったら、仕方ない」
 俺はゆっくりと、デッキを構える。
「お前のような趣味の悪いフェイカー(偽者)は、さっさと始末するか」
「やれやれ、結局こうなっちまうのか。できれば穏便に済ませたかったんだがなぁ・・・・・」
 そういって奴もデッキを構える。
「決闘!」
 俺は、自分すらも凌駕してやる。


今回あとがきはお休みです。
Date: 2004/06/29


ACT73:決意の夜
 コチコチコチ・・・・・・・・・
 時計の音がやけに大きく感じる。
 俺たちの場を制するのは重苦しい沈黙。誰一人、声を出す奴はいなかった。
「まぁ、そういうわけさ」
 沈黙に耐え切れなかったからだろうか。俺の意思とは無関係に口が言葉をつむいでいた。
「じゃあヒールは、そのミリアって人を生き返らせるために神のカードを奪ったの?」
 リディアの声は、どこか遠慮した響きがあった。
「いや、ミリアは魂を砕かれたんだ。普通の死ではなく、輪廻転生の輪から外れてしまったんだ。生き返らせることはできない」
 神の力を使えば死人を生き返らせることぐらいはできるだろう。だがミリアは死んだのではなく魂を砕かれた。いわば消滅させられたのだ。これでは神の力をもってしてもミリアを生き返らせることなどで気はしない。
「だから俺は考えたんだ。あのルシファーって奴がいなければ、ミリアはあんな目にあわなかったんじゃないかとな」
「それで、時渡りをしようとしたのか・・・・・?」
 ジンの言葉に無言でうなずく。そして言葉を続ける。
「奴は2000年ぶりの受肉だといっていたからな。過去に飛んで、奴を殺すことができれば、ミリアは消えずにすんだと思うからな」
「ですがそれは、歴史を変えることになってしまいます。それは召喚士としての最大の禁忌ではないのですか?」
「そうだ。だが、そんなことは関係ないのさ。俺はただ、もう1度ミリアに会いたかっただけなんだからな。たとえそれが禁忌だろうとも、躊躇う理由などありはしない」
「ではお前は、たった1人の女のために、今まで戦ってきたのか?」
「そうだ、俺はミリアを取り戻すために戦っている。これは、俺のエゴ。ケルヴィン、お前なら、少しはわかるんじゃないのか?」
「む・・・・・・」
 押し黙るケルヴィン、わからないはずはない。こいつだってあの時、1歩間違えたらウィンリィを失っていたのだから。
「つーわけだ。俺が旅をしているのは俺の汚いエゴのためなんだよ。この旅から降りたい奴は降りてくれ。別にとめないぜ」
 これは俺の本心だ。奴らが動き出した以上、これ以上俺と旅をしていたら死ぬ確率はかなり高くなる。しかもその理由が俺の身勝手なエゴときたもんだ。普通なら降りるよな・・・・・・
「ばーか、なに言ってんだよ。お前」
 だからジンの言葉を聞いたとき、俺の思考は一瞬停止してしまった。
「戦う理由がエゴ?充分じゃねぇか。だいたいな、人間はエゴの塊なんだ。エゴのない奴なんざ人間じゃねぇよ。それによ、そうやってお前が汚れんのも、すべては大切なものを取り戻すためだろ?だったらいいじゃねぇか、思いっきり汚れろよ。その汚れは、誇っていい汚れだぜ」
「そうだよ!ここまできたんだからさ!最後までやろうよ!」
「もとより、あんな危険は奴らを野放しになどできん」
「時の管理者として、あのような方々を見逃してはおけませんからね」
 俺は大きくため息をつきながらベットに倒れこむ。
「お前ら、ホントに、物好きな奴らだな・・・・・・」
 なんか、ひとりで今まで隠してきた俺が馬鹿みたいじゃねぇか・・・・・・・




「ヒールさん?ちょっといいですか?」
 その日の夜、部屋でくつろいでいるとクロノがやってきた。何のようだろうか?
「恋人を取り戻すために、それが、ウルド様との共闘の約束ですか?」
「ああ、時の管理者のあんたとしては、あまりいいことじゃないんだろうけどな」
 あたりまえか、俺のしようとしていることは歴史を変える。時の管理者のクロノとしては、本来なら見過ごせないのだろう。
「僕にそんな資格はありませんよ。僕も、同じようなものですから・・・・・」
 初めて見せる、クロノの悲しげな表情。
「どういうことだ・・・・?」
「この写真を見てください」
 そう言ってクロノは懐から1枚の写真を取り出し俺に渡してきた。
 そこには幸せそうな笑顔をしているクロノが写っていた。だが他には特に特出すべきものはない。
「お前、自分の写真後生大事に持ってるのか?」
「違いますよ」
 苦笑するクロノ。
「本当ならこの写真には、ひとりの女性が写っているはずなのです」
「写ってないじゃないか」
「ええ、彼女はもう、どこにも存在していないのです。過去にも、未来にも」
 過去にも未来にも存在していない。どういうことだ?
「どういうことだ?」
「ええ、彼女のいた時は、時食いに食われてしまったのです」
 時食い、ウルドたち運命の3女神の宿敵、今はどこかの時代に逃げ込み、自らのマスターを探しているのだという。
「実は時食いは、以前にも現われていたのです」
「なんだと?」
 衝撃的事実、だがクロノは気にせず言葉を続ける。
「300年前、僕は時食いを倒すために、ウルド様たち運命の3女神や、その当時の仲間たちと戦いました。何とか戦いには勝利したのですが、その代償はあまりにも大きかった・・・・・・」
 顔を伏せるクロノ、この男が、笑顔以外を見せるとは、それはよほど、こいつの心の奥底に眠っていたらしい。
「時食いに殺された人は、時が消えてしまうのです。その人との関係のあった人の記憶からその人は消えてしまい、その人が存在していたという事実すら、なくなってしまうのです。今でも覚えていますよ。彼女のぬくもりが、この腕から消えていく瞬間を・・・・・・」
 自らの両手を見つめるクロノ。それは、どんな気持ちなのだろう・・・・・・
 大切な人を護れなくて、そして、護れなかったという事実さえも無かったことになってしまう。
 俺なんかにはとても想像できなかった。
「僕が時の最果てに身を置き、自らの過去と未来を捨てたのは、彼女のためなんです。この世界のときから切り離された最果てに身をおき、時の管理者となることで、何とか僕だけは、彼女を忘れずにすんだのです」
 たったひとりの女のために、自らの過去と未来をなげうったクロノ、俺は今まで、クロノは強い人間だと思っていた。
 だが違った。おそらくこいつは、俺たちの中で1番弱い。こいつは、砕けてしまった大切なもののかけらを、今も必死になってかき集めているのだ。
「でも僕は後悔はしてません。時の管理者になったおかげで、僕は彼女を忘れずにすむのですから」
 そう言って笑うクロノの笑顔は、まるでガラス細工のように、脆そうだった。



「そうそう、あなたにこれを渡しておかなくては」
 しばらく話した後、クロノは1枚のカードを渡してきた。
 現在の女神ヴェルダンディ
 そのカードには、そう書かれていた。
「これは!?」
「はい、あの時何とか回収に成功しました。これで後はスクルド様だけですね」
 クロノからカードを受けとる。そのとき、頭の中に声が聞こえた。
(あなたがウルド姉さんのマスターですね。よろしくお願いしますわ)
 上品な声、これがヴェルダンディの声なのだろうか?
 これで、運命の3女神のうち長女、ウルドと次女、ヴェルダンディが揃った。あとは三女のスクルドのみ。
「それでヒールさん、僕は明日、ちょっと出かけます」
「なに?どこへだよ」
「ええ、いったん時の最果てに戻ろうと思ってまして、そこでスクルド様の居場所を探ってみましょうかと」
「できるのか?」
「やって見せますよ。任せてください」
「・・・・・・・・じゃぁ、頼む」
「ええ、それではそろそろ。おやすみなさい。ヒールさん」
「ああ」
 そう言って、クロノは部屋を後にした。


あとがき
ぐはぁ・・・・・・なかなか決闘シーンにたどり着けない・・・・・・
Date: 2004/06/29


ACT72:嘘つき
奥で待っている・・・・・・
 スロウスとかいう奴は俺たちにそう言い残してどこかへ姿を消した。
「一体、奴はなんだったんだ?」
「おそらく、彼は時間稼ぎに出てきたのでしょうね」
「時間稼ぎ?どういうことですか?」
「つまり、奴は最初から俺たちを倒すことが目的ではなく、何らかの意図を持って俺たちを足止めしていたと、そういうことなのか?」
「たぶん、確証があるわけじゃないけどね」
 時間稼ぎ、だとしたら奴、いや、奴らは何を考えているんだ?正気まであふれさせて・・・・・・・
 くそ、なんだか嫌な予感がするぜ・・・・・・・
「どうするウィンリィ?先へ進むのか?」
 俺の言葉にウィンリィは少し考え込む、そして考えが決まったのか、顔を上げた。
「先へ進みましょう、ここまで瘴気があふれてしまっては、もう私たちで何とかするしかないわ」
 確かに、ここから応援を要請しても果たして何とかなるのかは疑問だ。
 結局俺たちは、そのまま先へと進むことにした。


「ウィンリィ様!」
 しばらく進むと、別ルートを通っていた神官のうちの一人の女神官が真っ青な顔をして現われた。
「どうしたの?真っ青な顔をして、他の2人は?」
「そ、それが・・・・・突然、金髪の少年に襲われて、わ、私以外の2人は・・・・・うっ」
 そこまで離して彼女は床に嘔吐した。
 この取り乱しよう・・・・・・・そして嘔吐・・・・・・・ほぼ間違いないな。
「ウィンリィ」
「解っているわ、2人は殉職したのね?」
「そ、そんな・・・・・・」
 ミリとミリアまで真っ青な顔をしている、俺はミリアを落ち着かせるために彼女の肩を抱いた。
「大丈夫だ、心配するな。お前は、俺が護る」
「ち、違うのヒール、昨日まで、一緒に暮らしていた人がもういないなんて、信じられない・・・・・・」
 なるほど、青ざめた原因はそれか、ミリアは人の死敏感過ぎる。だから、ちょっとした顔見知りでも心を痛めてしまうのだ。
 いや、あるいは俺が、人の死を軽く見すぎているだけなのか?
 今はそんなことを考えている状況じゃないな。
「どうするウィンリィ、このまま先に進むか?それとも彼女を神殿まで送るか?」
 どうみても、彼女は戦える状態じゃない。ここはいったん彼女を神殿へと送り返すのもひとつの手ではある。
 そう思ってウィンリィのほうを向いたとき、一瞬彼女から完全に目を離していた。
 それがいけなかったらしい。
 トンという軽い衝撃、そして、腹部に焼きつくような痛みを感じた。
「な!?」
 見るとさっきの女神官が、俺の腹にナイフをつきたてていた。
 ナイフが引き抜かれる。途端に血が飛び散る。
「なにを」
 しやがる。と問い詰めようと女の目を見たとき、その女の目が正気じゃないことを悟った。
「ヒール!きゃぁ!」
 ミリアの悲鳴が聞こえる。見ると女がミリアを抱えて走り去るところだった。
「まちやがれ!」
 とっさに追おうとするが腹部の痛みに邪魔されてそのまま地面にひざをついてしまった。
「行かせない!行きなさい!熟練の・・・・・」
「いいんですか?」
 今まさにウィンリィがモンスターを召喚しようとした刹那、女が言葉発した。
「今あなたがモンスターで攻撃した場合、私は彼女を盾にします」
 つまり、ミリアを人質にした。ということだろう。
 そのまま走り去る女。
「ウィンリィ!追え!」
 とっさにウィンリィに言う、だがこいつはまったく動かなかった。
「だめよ、まずはあなたの傷の治療を優先しましょう」
「何を言ってやがる!早くしないと、ミリアが!」
「すぐに殺されることはないわ、殺すつもりなら、今ここで殺しているはずよ。それよりそんな傷を負ったあなたをここにおいていくほうがよっぽど危険よ。今治すからじっとしてなさい」
 そういって、ウィンリィは1枚のカードを取り出した。
「天使の生き血、発動!」
 俺の体が輝きだし、腹部の傷が完全に消えた。
「行きましょう」
 ウィンリィの言葉を待つまでもなく、俺は走り出していた。



 しばらく走っていると、1年前、ライド兄弟と決闘したあの広間にやってきた。
 だがそこは1年前とは全然違っていた。
「な、なんだあれ?前に来たときは、あんなものはなかったぞ・・・・・」
 広間の中央部、そこの空間には、何か大きな切れ目のようなものがあった。瘴気はそこからあふれていた。
「これは一体、なんなの?」
「門だよ」
 ウィンリィの呟き、それに答えが返ってくるとは・・・・・
 声のしたほうを見るとそこに立っていたのは1人の女。黄緑色の髪と瞳、髪は足元まで届く程に長く、前髪が顔の半分を覆い隠している。着ている服は黒衣のドレス、首元から足までそれが覆い隠している。
「はじめまして、私の名はエンヴィー、といっても、これは仮の名前なんだけどね」
「スロウスとかいう奴の仲間か」
「まぁ、そういうことになるんだろうね」
 冷や汗が流れる。この女、危険だ・・・・・
「ヒール」
「なんだよ?」
「ここは私が食い止めるわ。あなたは先に行って、ミリアを助け出して」
「・・・・・・・・いいのか?」
「ええ、ミリアも、あなたに助けてもらいたいだろうしね」
 確かに、ウィンリィの言うとおりだ。ここで無駄な時間をすごすわけにはいかない。
「頼んだぞ!ウィンリィ!」
疾走、それをとめなかったエンヴィーにも疑問は残るがここはそんなことを気にしてはいられない。
 俺は躊躇なく、広間中央部の割れ目へと飛び込んだ。
「フフフ、門の中にようこそ・・・・・・」
 すれ違いざまに聞こえた、エンヴィーの声がひどく不気味に思えた。



 そこは、とてもこの世界に存在する場所とは思えなかった。
 視界を覆いつくすほどにあふれでる瘴気。
 壁はなにやら脈打っているかのように動き、そして奥には祭壇のようなものがあった。
 そこにミリアは寝かされていた。どうやら気絶しているらしい。
「ミリア!」
 俺は無我夢中で走った。周りへの注意を怠ったのだ。
「いかせん」
 だからその声が聞こえたとき、俺はとっさに反応することができなかった。
 突如前に現われた男、黒い髪に黒い服に身を包んでいた。だが何より印象的なのはその目だ。右目の色は黒だが、左目の色は赤、左右で目の色が違うのだ。そして腰には2ふりの方場の剣がさしてあった。
 次の瞬間、俺の体を衝撃が駆け抜けた。
「な!?」
 それが男が目にも留まらぬ速さで俺を切りつけたことによる衝撃だと脳が理解するのに数瞬を要した。
 何とか踏みとどまる。大丈夫だ。まだ、やれる!
「どきやがれぇ!」
 男を払いのけるかのように手を振るう。
 再び男の手が掻き消える。
 次の瞬間、血しぶきと共に俺の右腕の肘から下が宙を舞った。
「ぐわぁぁぁぁぁぁぁ!」
 脳を焼ききるかのような激痛、だがその際の絶叫すら、男は許してはくれなかった。
「うるさい」
 一言、男は俺の左足の腿に、その剣をつきたてそれが腿を貫通して地面に突き刺さる。都合、俺は地面に縫い付けられた状態になってしまった。
「がぁぁぁぁぁぁ!」
 俺の悲鳴は後ろへと流れていく。
 男の拳が俺の腹を直撃したからだ。吹き飛ばされる俺、そして左足は地面に縫い付けられている。
 ぶちぶちという嫌な音と共に俺の左足は引きちぎられてしまった。
「ッ!」
 もはや悲鳴すら出ない。地べたにはいつくばった俺を、白衣を着た男が見下ろしていた。
「受肉祭にようこそ。ヒール=ナイツ君」
「だ・・・・・れだ・・・・・・貴様は・・・・・」
 激痛のためか、声すらまともに出ない。俺は、ミリアを助けはきゃならないのに・・・・・
「僕かい?ちゃんとした名前はまだないけど、一応、グリードって名乗ってるよ」
 男の赤い目が、俺を見下ろしている。それは、二つの紅い満月のように見えた・・・・・・
「ほう、このラースの攻撃を受け、なお喋ることができるか」
「だからいっただろ?彼には見所があるって。きっとルシファー様も気に入ってくれるよ」
 こっちに歩み寄ってきたのはさっき俺の手足をもぎ取った男と金髪の少年。そして少年の後ろにはさっきミリアをさらった女神官がついていた。
「一応、まだ正式な名前はないけど、自己紹介させてもらおうかな。僕の今の名前はグラトニー、受肉際、楽しんでいってよね。ああそうそう、ねぇグリード、僕お腹がすいたよ。少し腹ごしらえしてもいい?」
「ん?ああ、別にかまわないよ」
「そう、じゃあ早速」
 そう言ってグラトニーはおもむろにそばに使える女神官を呼び寄せ、その胸元に手を伸ばし始めた。
 手が胸に触れ、そして・・・・・・・
「な!?」
 ゴキ・・・・・・・グキ・・・・・・・ミシ・・・・・・・・・ザシュ・・・・・・・・
 凄惨な音が響き、グラトニーの腕が女神官の胸に埋没していく。腕が埋没するごとに血が地面へと飛び散る。そしておもむろにその腕を引き抜く。
 その手に握られていたのは、女神官の心臓だった。
 ドサっと、女神官が地面へと転がる。もうその目に生気は宿っていない。
「フフフ、予想通り、この心臓もおいしそうだ」
 一口、二口と、グラトニーがその心臓にかぶりつく。
 その光景を見て、吐き気がしてきた・・・・・・・
「ごちそうさま」
 凄惨は食事を終えたグラトニーの顔は、まるでご馳走を平らげた子供のようだった。
「お前たちは・・・・・・なんなんだ・・・・・・」
 思わず出た言葉、だが、聞かずに入られなかった。こいつらが、俺たちと同じ人間だとは思いたくない・・・・・・
「僕たちは、罪さ・・・・・」
「なに?」
「有史以来、人間たちが心の奥底に閉じ込めている罪、その体系化さ・・・・・・僕たち7人は、それぞれ罪を持っているんだよ」
「7つの・・・・・大罪・・・・・」
「その通り、さてと、君はある意味、運がいいのかもしれない。これから始まる受肉祭の、唯一の観客になれるのだから」
「受肉祭、だと・・・・・?」
 なぜだかその言葉に、俺の心が警鐘を鳴らしていた。
「お前ら!ミリアに指一本でも触れてみろ!絶対にぶっ殺してやるからな!」
 残った左腕と右足をフルに使い、俺は立ち上がろうとした。ミリアは、俺が護る!
「黙れ」
 右肩に衝撃、一瞬後、同じところに激痛が走った。
「がぁ!」
 ラースが、俺の方にその剣を突き刺したのだ。
「ラース、それ以上やっては死んでしまうわよ」
 聞こえてきたのは、艶かしい女の声、こちらにやってきた第4の人物は、胸元の大きく開いた黒いドレスに身を包んだ女。髪の色も同じく黒だが、その瞳の色は金色だ。
「ラスト、俺の邪魔をする気か?」
「いいえ、でも、それ以上この子を痛めつけるのは、あの方も望んではいないはずよ」
「・・・・・・・」
 剣を鞘に戻すラース
「あれ?まだ始まってなかったの?」
 聞こえてくる声、聞き覚えがある。確か、エンヴィーとかいう奴の声だった。奴がここにいるということは・・・・・・
「やあエンヴィー、あの女は始末したのかい?」
「いや、もうそろそろ受肉際の時間だから戻ってきた。でも安心してよ、たぶん今は動けないだろうから」
「へぇ、すごいな。エンヴィー相手に生きているなんて」
「グリード、そろそろ、受肉際の時間だ。プライドも、待っている」
「そうだねスロウス、そろそろ始めよう。死と恐怖の魔人、ルシファー様の受肉祭を」
「ぼうや、そこで見てなさい。あなたの最愛の少女が、この世から消え行く様を」
「な・・・・・・・」
 絶句、次の瞬間には、怒りがわいてきた。
「やめろぉ!貴様らぁ!ミリアをはなしやがれぇ!」
 クソ!動け!動けよこの体!あいつを、ミリアを助けるんだよ!
 だが、俺の体はピクリとも動いてはくれなかった。
 やがて7人が祭壇の前に集まる。
「我ら7つの罪がここに集い1つを願う」
「深淵の底を封じし縛鎖を砕きしことを」
「絶望を具現かすることを」
「死を召喚することを」
「闇より暗き闇をもたらすことを」
「光の器を闇色に染め」
「来たれ死と恐怖の魔人、ルシファー!」
 1本の闇の柱が立ち上る。ミリアは、その中に・・・・・
「やめろ」
 ミリアの体を闇が巻きついていく・・・・・・
「やめろぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!」
 絶叫、だが無常にも、次の瞬間。ひときわ強く、闇が輝きだした。
「ああああああああああああああああああああ」
 ミリアの絶叫、それが、俺が聞いた、ミリアの最後の声だった。
 パキンという音が響く。なぜだかそれが、ミリアの魂が砕けた音だと理解できた・・・・・・
 闇が治まったとき、そこに立っていたのは一人の男、闇よりもさらに黒い髪、アメジストをはめ込んだかのような紫の瞳、黒衣の服に身を包み、そいつは立っていた。
 そいつは手を2、3握り、満足そうにうなずいた。
「ふむ、悪くない。2000年ぶりの受肉祭、大儀であったな、罪どもよ」
 7人は一様にひれるし、そいつを出迎えた。
「それでルシファー様、いかがなされますか?」
「うむ、このままこの世界を闇色に塗り替えることも面白いが、我の器となった娘、やつめ、最後まで抵抗しおった。おかげでこの体はまだ不完全じゃ。しばらくは闇の中にいる必要がありそうだな」
 そう言ってそいつは俺のほうに歩み寄ってきた。
「ほう、お前か、今回の受肉祭の観覧者は」
 こいつが、ミリアを・・・・・・
 殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる、殺し
てやる、殺してやる、殺してやる、殺してやる!
「なるほど、よい憎悪だ。その目、貴様の闇を垣間見れるぞ」
「黙りやがれ、よくも、ミリアを・・・・・・ッ!」
「我が憎いか?いいぞ、もっと我を憎め!その絶望と憎悪を育て、再び我の下に来るがいい。そのときこそ、貴様の憎悪と死を食ろうてくれる!絶望こそが、我が絆!死こそが我が証!貴様の心に、我が生を刻んでくれる!ククク、ハハハハハ、ハーハッハッハッハハ!」
 ルシファーの勝ち誇ったかのような笑いを耳にしながら、俺の意識は闇へと落ちていった。



 目を覚ますと、俺はベットに寝かされていた。どうやら俺は生きているらしい。
 体の痛みはほとんど消えている。そしてどういうわけか、失ったはずの右腕と左足もくっついていた。
 もっとも、まだ神経が再生しきってないせいか、ほとんど動かすことはできないが。
「気がついた?」
 と、そこにウィンリィが入ってきた。その体のところどころには包帯が、そして松葉杖をついている。相当手ひどくやられたようだな・・・・・・
 そして俺はウィンリィに軽い状況説明をしてもらった。
 ウィンリィがエンヴィーとの戦いの後連絡して救援に来てもらった神官たちが俺を運び出すとき、もうそこには誰もいなかったそうだ。俺の怪我はかなりひどく、最低でも3ヶ月はベットの上だそうだ。
 ある程度聞いた後、俺はウィンリィにひとりにしてくれるよう頼んだ。
「ちくしょう・・・・・・・・」
 思わず声が漏れる。
「何が、護るだ・・・・・・・」
 俺は、嘘つきだ。
 護ってやるなんていっておきながら、なにひとつ護れなかった・・・・・・・
 命を駆けてなんていっておきながら、結局俺は、このちっぽけな命ひとつ、投げ出すことができなかった・・・・・・・
 自然と、涙が流れた。クレイジーフレアの皆が死んだ時だって、涙なんか、出なかったのに・・・・・・・・
 俺は、嘘つきだ・・・・・・・


守りたいものが、あった・・・・

それを守れなくて思い知らされた・・・・

俺は、何一つ守れないと・・・・

それでも俺は、もう一度彼女に会いたかった・・・・

彼女の笑顔が、見たかった・・・・

彼女の声が、聞きたかった・・・・

彼女と一緒に、いたかった・・・・

だから俺は、迷わなかった・・・・

たとえそれが、禁忌にふれようとも・・・・

躊躇うことはなかった・・・・


3ヵ月後、俺の眼前に神官たちが立ちふさがっていた。
 そして俺は、神を奪いし罪人となった。



あとがき
ツキ「・・・・・・・・・」
ジン「どうした?作者」
クロノ「なんか、真っ白になってますねぇ・・・・・・」
ツキ「燃えたよ、燃え尽きた。真っ白にな・・・・・・・」
ジン「また微妙に古いネタやりおって・・・・・」
ツキ「今回はかなり疲れましたよ」
クロノ「久々に長かったですからねぇ」
ジン「でもこれで過去偏終了だろ?ってことは、また俺たちの出番になるわけだな?」
ツキ「ああ、でもジンの出番は次回にはありませんよ」
ジン「あんですとーーーーーーーー!?」
クロノ「あらら、今度はジンさんが真っ白になってしまいましたね」
ツキ「今回はこれで閉めますか」
クロノ「そうですね、それでは、また・・・・・・」
Date: 2004/06/28


ACT71:大食と怠惰
「これは・・・・・想像以上にひどいわね・・・・・・」
 遺跡に入ってからすぐに、俺たちは今のこの遺跡の状態を知った。いたるところに瘴気があふれ出しているのだ。これではウィンリィでなくとも思わず声が出てしまう。
 とにかく、少量でも瘴気をすうのはまずい。俺は魔力を展開し、ドーム状の結界を作った。これで瘴気が入り込むことはないだろう。
「それじゃぁ予定通り、2つに別れて探索開始よ、いいわね?」
 無言でうなずく5人、そして俺たちは俺、ミリア、ウィンリィと残る3人の神官の2班に別れて遺跡内を探索することとなった。



 暗い暗い闇の中、罪から生まれし7人が、6人の神官たちを闇の中から見つめていた。
「来たよ、この間の奴らと違って、今度の奴らの血はおいしそうだ・・・・・・」
 響く声は少年のもの、大食を背負うグラトニー、その整った唇を、自らの舌でなめまわす。
 まるで、極上の料理を前にした子供のようだ・・・・・
「お前は血を飲むことしか頭にないのか?」
 嘲笑するかのような重い声、声を発したのは黒髪の男、憤怒を背負うラース。
「ふん、君こそ、少しは殺し以外のことにも興味を示したらどうだい?」
 鼻を鳴らして答えるグラトニー、その目にも見下したような色が見える。
「それで?どうするつもり?」
 聞こえる声はなまめかしい響きを放っていた。色欲を背負うラストだ。
「まかせてくくれないかなぁ?僕に考えがあるんだけど」
 響き渡る声は神経を削る声、強欲を背負うグリード。
「へぇ?どんな考えがあるんだい?グリード」
 グラトニーの問いにグリードは静かに答え始める。
「まずは雑魚3匹を始末したい、これはグラトニー、やってくれる?ただし、彼らを殺してはいけない」
「なんで?あんな奴らじゃ腹ごしらえにはならないけど少しくらいは僕の腹を満たしておきたいところだよ」
「ごめんよ、今回はちょっと我慢して。彼らを君の従僕にしてほしいんだ。これは君にしかできないだろ?」
 グリードの言葉にその顔を笑みにゆがめるグラトニー、その笑みは獲物を見つけたジャッカルのような笑みだった。
「なるほどね、わかったよグリード、僕は先に行ってあの3人のところに言ってくるよ。ところで、3人とも僕に?」
「いや、1人で充分だ、残りは好きにしてもいい」
「了解」
 笑みを浮かべてその場から消えうせるグラトニー
「さてと、それからあとの3人にも少しの間の足止めがほしいな、これは誰でもいいから、誰か、立候補ある?」
 全体を見渡すグリード、その視線がひとつの影に定まった。
「珍しいなスロウス、君が率先して役目を引き受けるなんて」
「・・・・・・・・・」
 無言で立ち上がるのは怠惰を背負いしスロウス、そしてそのまま彼の姿も消え去った。
「さてと、そろそろ詰めだ、受肉祭の観覧者はあの銀髪の子だけでいい、だからあのポニーテールの女は始末してくれて構わない、誰か行ってくれる?」
「私に任せてくれるかな?」
 率先して立候補したのは足元まで延びた黄緑の髪と同じく黄緑の瞳をした女。
「そう、じゃぁ行ってくれる、それと、くれぐれも受肉祭には送れないでね。エンヴィー」
「ああ」
 そして同じく消えうせる嫉妬を背負うエンヴィー。その様子を見届けてグリードが口を開いた。
「さぁ、僕たちは観覧していよう、この悲劇の終焉を」
 グリードの声が、闇の中響いた。




 ヒールたちと別れて行動している神官3人、彼らは神殿でも上位に入る神官たちだ。たいていのことには対処できる。
 だが、これはたいていの事を越えていた。
 突如旋風と共に襲来した金髪の少年、グラトニーだ。
「な!?」
 神官の一人が気づくがもう遅い。グラトニーはその神官の側頭部をつかみうなじの部分をあらわにさせる。
 そしてそのままうなじに噛み付いた。
「きゃぁぁぁぁぁぁ!」
 近くにいた女性神官が悲鳴を上げた。そして血しぶきが、空へと舞った。
 グラトニーはそのまま首と顎の力だけで男を持ち上げ振り回し投げ飛ばす。
 男は首が千切れかかっていた。飛ばされていく体の軌跡を、血飛沫が描いていく。もう息はあるまい。
 そしてそのままもう一人の男の神官へと迫る。
「くそ!出てこい!バードマ」
「遅いよ」
 モンスターを召喚しようとした男の首にグラトニーの小さな掌が喰らいつきそのままひねり男の頚骨を爆砕する。
 無音の断末魔、一瞬にして2人の神官が死を迎えた。
「あ・・・・・・・あぁ・・・・・・」
 その場に尻餅をついて呆然とする残された女神官。蛇に睨まれた蛙のように身動きひとつ取れないでいる。
「安心してよ、君は殺さない。その代わり、ちょっとその血を味見させてよ。君はなかなか美形だから、その血もさぞおいしいんだろうねぇ」
 口を三日月型に歪ませるグラトニー、そこから2本の牙が顔を覗かせた。




 しばらく遺跡を探索していくと俺たちの前に一人の男が立ちふさがった。
 外見はとても人間とは思えない、筋肉に包まれた2メートル超の巨躯、灰色の髪、そして紫の瞳。だが何よりも、その男が発する威圧感が、俺たちの足を止めた。
「誰だ、お前は?」
 後ろにミリアをかばいながら問う。クソ!雰囲気に飲み込まれるな!
「己は、スロウス、正式な名はまだない、ゆえにこの称号を名としている」
 スロウス、怠惰と名乗った男はそのまま半身を開く。
「ここから先へは、行かせない」
 圧倒的に増す威圧感、後ろでミリアが後ずさりする気配が伝わる。
「この瘴気を出しているのはあなたなの?」
 この威圧感の中、微動だにせずにウィンリィは問う。
「その通りだ。この瘴気をとめたければ、己達を殺すしかない」
 己達、か・・・・・・相手は複数いるってことか。
「さぁ、少し付き合ってもらうぞ」
 やるしかないか!
「いくぞ!」
 モンスターを召喚しようとカードを引き抜く、他の二人も同じようにカードをかざす。
 だが・・・・・・
「悪夢の鉄檻発動、これでしばらく、お前たちの動きを封じさせてもらう」
「な!?」
 突然、俺たち3人は鉄檻の中に閉じ込められてしまった・・・・・・
「くそ!ミリア、ウィンリィ!どうにかならないか!?」
「ごめんヒール、今手札に除去カードないよ」
「私も手札に来ていないわ。まずいわね。ここで相手に上級モンスターを召喚されたら結構ピンチよ」
 だが俺たちの危惧を無視して、スロウスはそのままその場を去ろうとした。
「己の使命はお前たちの足止め、奥で待っているぞ」
 そう言ってスロウスは消えていった。


あとがき
やっぱり長いの今回で過去偏を終了できませんでした。
おそらく次回、過去偏終了かと思います。
Date: 2004/06/25


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